キス殺害
「戻ってくるのを待つ……決断するのは僕だ。動こう。五日目だとしたら、かなり時間が経過しているんだ」
カイトは死神が戻ってくるのを待たず、行動に移す事を決めた。彼女からアドバイスを貰うが、最終的に決めるのは彼。
当初、死神もそこまで口を挟まなさったが、共に行動するに辺り、助言の回数が増えただけ。
本来、カイトは自分の意思で行動するべきところだったはず。
「まずは……やっぱり、駄目だ。鍵が掛けられてる」
この部屋から出るためにも、カイトはドアを調べるのだが、施錠されている。逃げ出さないための当然の処置だろう。
内側に鍵穴はなく、外側だけにあるのか。もしくは、別の仕掛けが用意されているのか。
「今までは彼女の目があったから、気付けた事ばかりだったけど、今回は僕だけでどうにかしないと」
カイトがまずしたのはドアに耳を当てた。外の音が聴こえるかどうか。
館内の場合、ドアが閉まった状態であれば、部屋と外での音は遮断されていた。
ここが館と別の場所であれば、音が漏れる可能性は十分ある。
部屋の前に誰かが待機していないか。カイトがまだ意識を失ってると、何かしらの情報を口に出していたら御の字だ。
「……無事にキスを殺せたようだね」
ドアの向かう側から声が聞こえてくる。だとすれば、ここは館内ではないのか。
それよりも誰かが衝撃的な発言をしている。
『キスを殺せたようだね』と。カイトが意識を失っている間に、キスが殺されてしまった。
彼女は魔法回数が一回は残っていたはず。日付が変わっていれば、三回に復活するわけで、簡単に殺せたりするものなのだろうか。
「一度はやられた立場だが。殺れたのはセシルのお陰だ。彼女は顔と喉をやられて、重症だ。それで魔法回数を減らしてくれた。途中で来た私に譲ったのも、限界ではあったのだろうな」
セシルとは一体誰なのか。その名を出したのは男の声。しかも、聞いた事のある。
話しているのは十。館の主であるなら、相手側の投げる言葉がおかしい。従者が主に対して、使う言葉使いではない。
彼からしても同等の立場に思える。
「……セシルには無理させたね。けど、彼女が望んだ事だから。壱を仲間にするためだとしても、余計な事まで言った落とし前みたいな」
そして、もう一人の言葉で『セシル』が三である事が分かった。よくよく聞けば、この話す声も零であると分かる。
三がキスと戦闘になり、深手を負った。その代わり、キスに魔法を使わせた結果、十が彼女のトドメを刺す事に成功したという事だろう。




