予知
「何当たり前の事を言ってるのよ!! そんなの従者のアイツが置きに行くに決まってるでしょ。継承の権利の話も忘れたわけ?」
「そうだな。私達にとっては人形を似せれた理由の事の方が気になる。後々、その人形に何かあるやもしれんからな」
キスとアルカイズも人形を置いたのが零だと疑ってもいない。そんな言葉が出る時点で、二人が従者を使って、仕掛けた事ではなさそうだ。零自身も置いた事を認めている。
ディアナはメアリに何も言わないが、零の方をジッと見ている状態。その方法を一番知りたいのはディアナなのだろう。
「すみません。横やりを入れた形になってしまいした。貴女もその方法を教えてくれますか」
メアリは三人に謝り、零に話の続きを促した。
「簡単な話です。主は予知の魔法が使えるらしいです。決まった時を選べるわけではなく、勝手に発動もするらしいので、完全とまではいかないようです。皆様方が継承の権利を得たのも、この予知があったからです。私が従者になったのも、予知が関係していたのかもですね」
ゴールド=ゴールは回復魔法だけではなく、予知の魔法も使える。それは制御出来ず、完璧な魔法とまでは至らなかったらしい。
「予知魔法!? 回復魔法だけでも凄いのに、そんな事まで。それが本当なら、どれだけヤバいのよ」
「私達が選ばれた理由が分からなかったが、予知で判断したのか。回復魔法だけでなく、それも継承出来ると思っても構わないのだろうか?」
「そこまで詳しくは。魔法の継承なので、それも含まれるかもしれません」
「なるほど……事実であれば、似た人形を作れたのも納得出来ますね。完全でないのも、メアリの従者が来た事からも伺えます。それでも凄いですよ。そちらの魔法の方が欲しいぐらいに」
予知の魔法に三人は興奮していて、本当だと疑っていない様子だ。予知という魔法は零が咄嗟につけるような嘘ではなく、メアリとカイトが館に着く前、それらしき何かを見たのかもしれない。
予知の魔法は回復魔法と同等、それ以上に凄い魔法なのだろう。
「そうですね。彼が来た事は驚きましたから。予知で見たところに、その姿が見えなかったのかもしれません。私が見たわけではないので」
『私が君をねじ込んだかたちだからな。予知は間違っていないか。それであれば、ゴールド=ゴールはメアリ達の死も予知していたとすれば、それを見るために呼んだのかもしれないな』
予知が事実なのかの確認。もしくは、他者の死を楽しむため。直接ではなく、誰かが殺害するのを観戦したい可能性もある。
だが、魔法使い同士の争いは禁じている。館の主本人が例外であれば、犯人の可能性は高まってくるのだが。
メアリは三人とは違い、反応が薄い。ここには回復魔法を手に入れるために来ただけで、予知には興味がないのか。
いや、ディアナ達三人が零の言葉に意識が向いてる中、メアリの口が僅かに動いた。それは詠唱であり、何かの魔法を使ったようだ。