何もなし
「僕を殺さないという指示は……この館に来た時点……最初からですか?」
カイト殺害禁止は途中からの可能性は残されている。最初の殺害、十の偽装殺害のために人形が用意されていた。
この事件が計画されていたのなら、最初に殺すのは厳しいのはある。
最初からなのか。途中で変えたのか。犯人は絞られてきたが、新たな謎が出来てしまった。
「質問は終わりよ。答える事が出来たのかも教えられないわ」
三が最後の質問を先にさせたのも、この質問をさせないためか。
そうだとしたら、答える事は出来た可能性はある。解答を拒否すれば良いだけなのだから。
カイトが殺害されなかった理由を先に聞くのか試したというのもあるのかもしれない。
「でしたら、僕を勧誘する事で何をさせるつもりなんですか? それが分からない以上、どうするのかなんて決めれません。貴女達はディアナ様やアルカイズ様を殺しただけでなく、仲間だった七も殺したわけです」
メアリとキス殺害以外にカイトにさせる何かがあるのか。館の主の思惑が分からない。
最終的に生贄にされる可能性も残っている。
「殺されないと分かると強気に言ってくるわね。七は指示を無視しただけでなく、キス殺害も失敗したから、当然でしょ。それに……殺す事を禁止されているだけ……というのを忘れないでよ」
カイト殺害は禁止されているが、逆に殺さなければ、何をしても構わないとも取れる。
彼女はボウガンを所持していて、こちらに向ける。視線はカイトが持つ斧に向けており、警戒しているようだ。
「当然、それに関しては答えるわ。何もしなくて良い。私達の邪魔をしなければ、それで良いわ。壱だけが、ここから離れるのでも構わないから」
それはメアリやキスを見捨てて、この館を後にする。殺される事もなく、生贄にされる事もない。
だが、過程が違うだけで、過去に起きた出来事と最終的には同じになってしまうのではないか。
この世界は死神が作り出した擬似的世界。カイトの死と共に消えてしまうのだが、解決出来なくとも同じ事。
この場から離れる選択をした時点で、死神はこの世界を消しかねない。そして、カイトも死ぬだけでなく、存在すらも消える。
死神もカイトが出す返答に口を出さない。出さなくても決まっている。
彼がここで諦めるわけがないと分かっているからだ。
「なるほど……この館に僕は来なかったように仕向けたい感じなのですか?」
「そう受け取っても構わないんじゃないかな。この館で起きた事を、壱が誰かに話したところで信じて貰えるとは思えないし。主を置いて帰った時点で従者失格になるんだから」




