殺害禁止令
「……僕にメアリ様ではなく、キス様を殺させようと考えているのですか?」
それは成功率はかなり低い。カイトも少しは信用を得たとは思うが、完全ではない。
分断された事により、キスもカイトに対して警戒はするはず。無事に合流出来た時点で怪しく思うだろう。
分断するには、何かしらの理由があるはずだからだ。
逆にカイトがキスを襲う事により、返り討ちに遭う。カイト殺害により、メアリとキスが殺し合う。
魔法回数を考えるとキスが不利。だが、攻撃魔法を得意としているのは彼女の方だ。
その前に従者達がキスに魔法を使わせていたら。カイトを殺害するのに魔法を使用していたのなら、メアリが勝利するだろう。
彼女も彼が殺されたのなら、躊躇う事もないはず。
「そんな事はさせないわ。壱は殺さないようという指示があるから。外で争った時もおかしいと思わなかった?」
「それは……十は手を抜いているように見えました。メアリ様やキス様をおびき寄せるためとも考えてました」
「そのためでもあったし、別の理由もあったんだけど」
別の理由というのは、零に対するメアリとキスの疑いを消すためだろう。
零が二人に襲われた事により、疑いが薄まったのは確かだ。
館の主の情報も信じる程に。混血の情報は嘘ではないはず。
『彼女は赤の侵入者が十である事は否定しなかった。それも重要な事の一つではあるが』
カイトが何気なく、赤の侵入者を十と呼んだのだが、三はそれを肯定するように、話を進めていく。
十の生存がカイト達に知られていると判断した結果なのか。
『君の殺害を禁止しているのは、どういう意図があるのか。確かに彼等が君を殺せるタイミングは幾つもあった』
館外での攻防もそうだが、従者の部屋で眠らされた時もそう。花瓶の魔導具に閉じ込められた時も、誰かに救助されなかったら……
その言葉を考えると、カイトを助けたのは三であり、罠に嵌めたのが七の意思だったのか。
他にもメアリと別行動に狙う事は可能だっただろう。
「……メアリ様達殺害は計画されていたものだとしたら、おかしな事になります。これが擬似的世界だとしても、再現はしているんですよね?」
『勿論だ。君が介入する事で流れが変化するのはすでに分かっていると思うが、事件前の事に何かする事もない。君はこの事件に不参加になっていたはずだ』
メアリはカイトの不参加で紹介状の返事を館の主であるゴールド=ゴールに返しているはず。
今となっては嘘である可能性が高いが、カイトが来る事は予知魔法でも見えてなかった。
ディアナやアルカイズ殺害が計画的なものだとして、カイトを仲間に勧誘するのは到底無理だろう。




