間違い
三はカイトのその質問に対する答えを発する事はなく、ジッと睨み付けてくる。
彼女にとって、その質問は面白いとは思わなかったのか。そんな質問をした事により、失望したのか。
なんせ、その死体が何者なのかを知ったところで、カイト側に何の得があるのか。
「あの死体は僕の代わり……メアリ様の従者になるはずだった。僕が来る事は予定されてなく、他の魔法使いと平等にするために用意されたのではないでしょうか?」
カイトは自身の考察も三に告げた。彼女が黙っているのは、続きの言葉を待っていたかもしれないからだ。
「……面白いね。自分がメアリを一番に分かってるみたいな感じがね。知りたいのは、自身と比べたいから。そういう質問もありだと思うけど」
「それに関しては否定しません。ですが、それはメアリ様を殺害するため……もしくは、守るためだったのか」
カイトは自身との比較に関して、否定する事はしなかった。そして、メアリをどういう対象として捉えているのかも、一緒に聞き出そうとしている。
「無理よ。それに答えるつもりはないわ」
「それは」
「前者と後者、両方共よ。一つの質問として扱ってあげるから、そこは感謝しなさいよ」
「この質問が……ですか?」
カイトもこの質問が拒否されるとは思っていなかった。
相手はすでに死んでいる身。カイト自身、自己満足的な物だと三に告げていて、あちら側の不利になる要素は一つもないはずなのだ。
メアリがカイトよりも前に従者がいて、その人物だった。
だとすれば、メアリのカイトに対しての裏切り行為にはなるのかもしれない。告げた方が、カイトを仲間にしやすくなるだろう。
零から勧誘らしき言葉があり、三がこの場にいる事自体が、その目的である可能性がある。
「まぁ……一言だけ。その代わり、次も壱が質問しなさい。最後の質問は私がするわ」
『情報が少しでも入るのなら、了承するべきだろう。こちらとしても後だろうと、先だろうと変わらない』
「……分かりました。一言でも良いので、お願いします」
三は軽く笑みを浮かべる。それはカイトの質問を気にいったのか。
「間違ってるわ。それだけよ」
彼の考察、それが間違っていたのが余程面白かったのかもしれない。それまでが良い結果を出していたのだから。
従者として、カイトでもミスする事があり、完璧でなかった事が嬉しかった可能性も十分ある。
三自身、自分の方が上だと思ったかもしれないが、それはミスを招く事になる。