様付け
「僕とメアリ様の出会い……何故、従者が僕だけなのか……ですか? 何でそんな質問を……」
三からの予想外の質問。これは三自身が知りたい事なのか。
「貴方の能力が凄い事は一緒にいた時に分かったわ。貴方が混血で、それを知っていたとしてもよ」
何故、その質問をしたのかを彼女は答えない。優遇されていた事に不満があるような顔もしていない。
『……気付いてるか? 彼女は混血という存在を知っている。君が混血だと疑っているようでもあるが、問題はそこじゃない』
混血の話は三に偽装された死体が発見された後にされている。
彼女がそれを知っているのは、零と情報共有をしているのか。実は彼女自身も混血という可能性もある。
カイト自身、自分が混血であるかも知らない。三達が評価する能力は死神の力を借りているだけ。
混血が与える能力とは違う。だとすれば、カイトは混血ではないのだろうか。
だが、死神は気にしているのはその点ではない。
『彼女はメアリ様と呼んだ。先程の会話で、アルカイズやキスに様付けなんてしなかった。メアリだけだ』
「あっ……そういえば」
三も無意識でメアリを様付けしたのか。だとしても、それは彼女を特別視していた事になる。
なんせ、主だったアルカイズを爺と呼んでいた。呼び慣れている、そちらを様付けするはず。加えて、キスに対しても様付けをしていないのだ。
「だったら、本当にメアリ様は無事である可能性が高いですね」
『そうだな。だが……止めておこう。君は嘘をつかず、普通に答えればいい』
メアリとカイトの出会いについて、すでに情報を入手済みで、それの確認の可能性もある。
「分かりました」
カイトは素直にメアリとの出会いを三に告げる。奴隷売場で買われ、特別な出会いではなかった事。
自身が混血であるという証明、証拠はない事も。
メアリがカイトだけを従者にする理由。
それに関しては、メアリにしか分からない事だ。
カイトに決定権はない。他の従者を取る事を拒否した事もない。
大人数よりも少人数、一人を大事にしたい気持ちがあったのか。
彼が覚えているのは、メアリは余所見もせず、一目見て、自身を選んだ事。
カイトにとっては運命的であっただろうが、メアリはどうなのか。
三に運命的な出会い等と、カイトも流石に言う事は出来なかった。
「メアリ様しか知り得ない事です」
それが事実。カイトの想像だけで、メアリの本を言えるはずもない。




