無難な質問
「無難な質問ね。まぁ……最初の質問としては間違いじゃないわ。あの爺の殺害に私が関与していると疑うのは当然。アイツがキス殺害をミスしたんだから」
七がキス殺害を失敗した事により、他の従者も主殺害を企てたと悟られたと三は思ったようだ。
「……ですね。命約を解除する方法があると教えてくれたようなものですから」
カイトも三の意見を肯定する。その方が彼女が気持ち良く話すと、死神がアドバイスしたからだ。
気持ち良く話すという事は、こちら側には都合が良く、あちら側には余計になる事まで話す。そこに本人は気付かないものだ。
「そうよ。私が罠に嵌めたの。魔導具の前で名前を呼んで、閉じ込めたわ。そして、水を流し込んだの。苦しむところや死に際が見れなくて残念なところだったけど」
花瓶の魔導具に関しての情報。そして、殺害方法を三は白状した。
アルカイズは花瓶の魔導具に閉じ込められ、殺されたのだ。溺死したのも、途中で水を流し込んだようだ。
命約は閉じ込めた前後、どちらかまでは口にはしてない。
アルカイズの体には無数の傷もあり、前である可能性が高い。でなければ、三の体が身代わりを受けていたはず。
三が館外に出たのも、アルカイズ殺害を怪しまれないためもあるが、命約が先に解除された事がバレないよう、死を偽装する必要があったのだろう。
「……アルカイズ様の従者になった事で、以前よりもマシになったと言ってましたよね」
彼女が館の主に協力する理由。生活は前の主よりも良く、その主を恨んでいるような言葉を発していた。いや、魔法使い自体を嫌っているのだろう。
彼を殺したところで、館の主も亡くなってしまう。従者でなければ、更に酷い生活が訪れる事は確定している。それを一番に嫌がっていたのではなかったのか。
「それは二つ目の質問として受け取るけど、それで構わないわけ?」
三はカイトの疑問を質問と受け取ったようだ。
薬室、調合室で話した延長線の内容だったはず。ある意味、主を裏切れるかどうかも含まれていたのかもしれないが。別で重要な面もあるのか。
『止めておこう。何か重要な事でありそうだが、あっちには拒否権もある。それで質問出来る数も減ってしまうのだから。誘導するために、その振り方をした可能性がある』
「……分かりました。貴重な質問枠ですから。下手に減らすわけにもいかないです」
カイトも死神の意見に賛成。怪しく思わせて、逆にどうでもいい返答が返ってきた場合もある。どちらにしても、数を減らせる事になる。
「止めておきます。次は何を質問するんですか?」
カイト側は多くの質問があるが、三側にそれがあるのか。全ては彼女自身が聞きたい事なのか。
「そうね……壱とメアリ様の出会いはどうだったわけ? 何故、メアリ様は貴方しか従者を取らないの?」




