黒の侵入者=?
「やっぱり逃げないのね。命約が切れるまでの距離を稼ぐ時間なら、与える事は可能なんだけど」
「三!?」
焼却炉がある方向から、変声がカイトの耳に聴こえてきた。
彼が外に出されるのは予想されていたのだろう。この場に待ち構えたのは零ではなく、黒の侵入者。
マスクを付けている事で声が変わっており、三本人であるかは判明されていない。
黒の侵入者はボウガンを手にしており、矢もセットされた状態。だが、それをカイトには向けていない。
彼を殺すのではなく、会話を優先するつもりなのだろう。とはいえ、近寄る事はせず、距離を取っている。彼の手には斧があるからだ。
彼女が攻撃をしなくても、カイトが攻撃を仕掛けてくる可能性を考慮しての事。
前回、仕掛けてきたのは黒の侵入者側なのだから、当然の行動となる。
「……その名前で呼ぶなんてね。最初から死体が私じゃないと疑っていたようだけど……」
黒の侵入者は自身が三であると肯定した言葉を発し、マスクを外した。
「素顔を晒した方が、壱も答えやすいでしょ。あの死体は白の燕尾服を着て、背丈も一緒。ポケットの中身も壱しか知らない物を入れていた。殺され方も人形と同じだったはずなのに。それを貴方に聞いてみたかったのよ」
これは彼女の純粋な疑問だったのだろう。疑ったのはカイトではなく、死神。幾つもの事件を解いたによる経験。知識や勘も働いたのだろう。
「……こっちの質問にも答えてくれるなら」
「私が答えていいのは限られてるけどね。それを見つけられたら、答えてあげるわ」
カイトは三にメアリの安否、居所を問い詰めるのではなく、情報の交換を要求した。
勿論、これは死神の指示。
メアリが無事である事は、三の言葉からも分かる。命約が切れる距離まで離れていいのであれば、彼女に何もしていない事は明白。
カイトとメアリが命約を結んでいない事もバレていないようだ。
「先に壱から答えて。そちらが不利になるような事はないはずよ。その間に質問をどれにするかも悩める時間にもなるわ」
「……それで構わないのですが、こちらの質問の回数を増やす事は出来ませんか? その分、そちらの質問を増やしてもいいので。答えられるかは別として」
一回でも失敗すれば終わりではなく、質問の数を増やす。カイト側だけでなく、三側もそれを良しとする。勿論、カイト側が有利になるだけなのだが……
「……良いわ。お互いに三回まで。答えられない場合もありで」
質問回数は互いに三回。彼女は最低で三つ、もしくは最高で三つまでしか答える事が出来ないのか。
カイトであれば、その三つを引き当てる可能性があると、三が考えていてもおかしくはない。
彼女はメアリ達と行動中、カイトの力を間近で見ているからだ。勿論、死神の協力によってだが。