狭い部屋
「私もそう思うわ。ここを使用した直後になるのだから、罠はない……と思いたいけど」
「念を押して、慎重に開けます。誰かが残っていてもおかしくはないですから」
メアリを運ぶために全員でなくても問題はないはず。時間稼ぎをするために、誰かを置く事も考えられる。
七の死体が放置されていたのも、時間稼ぎという理由もあったかもしれない。
『七を殺してまで、キスを生き残らせたわけだ。罠に嵌めて、君達を殺すつもりはないだろう。誰かが残っている可能性も低いはずだ』
死神は高確率で部屋に誰も残ってないと口にする。
罠の可能性が低い事はキスやカイトも理解している。
『正体を明らかにして、メアリがいる場所へ案内する。だとしても、キスの存在が邪魔だ。彼女が相手の話を聞くとも限らない。ついて行ったとしても、相手の思う壺だ。無事で済むわけがない』
侵入者側からしても、この場に残るのは危険だ。下手すれば、キスに殺される。だからといって、その逆が出来るかどうか。
メアリの場所を案内するにしても、信用出来るのか。
ディアナやアルカイズ、仲間だった七も殺害している。メアリも捕縛している状態で、それは無理な話だろう。
「妥当な判断だけど、待ち構えている可能性は少ないわね。私達を案内するのなら、別にこの部屋でなく、階段や七の死体があった場所で待っていればいいはずよ」
キスも死神と同じ考えのようだ。
カイトはキスの考えに頷き、ドアを開けた。
「キス様の言う通り、誰も待ち構えていませんね。むしろ……」
「何も置かれてない。私に用意された部屋に近い状態ね」
この部屋には何も置かれていない。別の場所に移動するための鏡の魔導具もない状態だ。
『だが、他の部屋よりも……メアリの部屋よりも狭い。何かがあるはずだぞ』
相対的な事を考えれば、メアリの部屋とこの部屋は同じ大きさでなければならない。
物の多さで狭く感じるのであれば良いが、何も置かれてない。
となれば、壁の厚みが違う事になる。そこに何奥行きもそうだが、両側の幅も狭い。
『……あれか。壁に僅かながら手の跡が残っている……扉のような線も両側に形跡がある』
死神の目はメアリ達の部屋との違いを見つけた。奥の左右両側に扉の形をした線の形跡が残っているようだ。
それに加えて、狭まった左右の壁に見えないスイッチでもあるのか、不自然に手の跡も発見したらしい。
「キス様。怪しい箇所が四つ見つかりました。多分ですが、二つは起動するためのスイッチだと思うのですが」