ルールの意図
「キス様とメアリ様が殺し合う……戦闘するという事ですか? ですが、魔法使い同士の争いは禁止されていましたよね。侵入者ならまだしも、お互いに攻撃するなんて事は……」
継承権争いにおいて、開始前に魔法使い同士及び、従者同士の戦闘は禁止されていた。
何故、そんなルールがあったのか。
館の主は戦闘ではなく、用意された謎解きをさせたかった。魔法だけでなく、頭の回転、柔軟性を要していた。それが回復、予知魔法に必要だったのかもしれない。
謎解きをさせるのが趣味、嗜好だったという事もある。勿論、それは失敗するのを含めてだ。
魔法使いの館が他の魔法使いにとって安全とは限らない。だからこそ、従者を連れて来る事が必須になっている。
もう一つ。メアリの体が目的であるのなら、キス達に彼女を殺されるわけにもいかないのもあるだろう。
「方法なら幾らでもあるわ。私が壱を殺す事になったら? 私とメアリのどちらかしか生き残れないとしたら? 前者であれば、メアリは目的を失っているのだから、罰を受けても攻撃してくるでしょうね」
メアリの目的は回復魔法だが、それもカイトの呪いを解くため。
彼が殺された時点で意味がなくなってしまう。その相手にメアリが復讐しようとするのは目に見えて明らかだ。
後者の方が、メアリは攻撃を躊躇うのではないだろうか?
「今思えば、魔法使い同士、従者同士の戦闘ではなく、殺害を禁止しなかったのをおかしく思うべきだったわ。私を含めて、魔法使いが従者を殺そうとはしなかった」
魔法使い全員が他者の従者を殺す事はなかった。
それは人形を見せた事も効果があったのかもしれない。
そこで従者を殺害すれば、館の主と繋がりがあると疑われる。
謎解きが多くあれば、一人で解くよりも相手を利用する。そのためには従者の命約は必要となってくる等、理由は幾らでもある。
「逆に……従者が魔法使いを殺すなんて事は無理……ディアナ達もそんな事を思わなかった。それが盲点だったわけよ」
命約も結んだ自身の従者が、館の主に仕えていたと誰が予想出来るというのか。
「このルールは従者が主を殺害するために必要だった。十はディアナを殺害して、三はアルカイズを直接ではないとしても、死に誘導した」
ディアナとアルカイズの殺害に関しては、キス達の想像でしかない。
確定するためには、従者達の姿を見なければならず、答えを聞く必要もある。
「従者全員がそれをする必要があるのかは分からないわ。壱も含まれていたのかもしれない。けど、その目論見は失敗に終わった」
分身ではあるが、七がキス殺害に失敗した。それだけでなく、本人に正体がバレてしまったのも問題がある。