残りの部屋
『七以外……侵入者達も最初から彼を殺す気はなかったはずだ。彼が取った行動が意に反する物だったから。鍵を取れず、死体を運べなかったのも、時間が足りなかったのではないだろうか』
ボウガンの矢が使われた以上、距離は離れていた。至近距離で放つとすれば、七も反応出来たのではないだろうか。
毒を使用したのも、確実に口を封じるため。これもキス達がこちらに来る事が分かっていて、即死させるしかなかった。
となれば、死体がある場所まで足を運べなかった。七を殺した相手は客室側にいる事になる。
当然、他の侵入者に対してもそうだ。赤の侵入者は片腕しかなく、運ぶのは難しいが、鍵だけを取る事ぐらいは出来る。
それが出来れば、その鍵を使う場所に逃げれたはず。それは零にも該当する。
「そう言われてみたら……そうですね。そこに隠れても、僕達が鍵を手に入れている以上は……」
メアリを探しているのであれば、鍵を手にしている以上、その部屋を確認しないわけにもいかなくなる。
勿論、客室側にある閉ざされた部屋も、カイトが持つ鍵で開くのであれば、同じ事なのだが。
わざと鍵を置き、カイト達をその部屋で狙うのもおかしな話になる。
七はキスだけでなく、カイトを殺そうとした。二人を殺すつもりでいるのなら、逆に彼が殺される理由がない。七に任せれば良かったはず。
「そういう事よ。こちら側の残された部屋は壱が開けなさい」
キスは七から取った鍵をカイトへ投げる。
「その鍵が無理なら、もう一つの鍵も試すのよ。他の部屋同様、開けたとしても安全だと思うから」
部屋の開閉に罠が仕掛けられていた事は一度もなかった。
侵入者が隠れている可能性もゼロではないだけで、限りなく低い。
「分かりました」
廊下の左側にある六つの部屋にあたる絵画室、調合室、衣装室、書斎、ピアノ室、残るのは一つ。メアリ達の記憶にない部屋。
カイトはその部屋に手を掛ける。ピアノ室や七の客室のように鍵の解錠はされていない。
先にキスから渡された鍵を試してみる。花瓶の魔導具にあった鍵だとすれば、中に入るのが難しくなるはず。勿論、鍵がもう一つ用意されていたとすれば、別の話になる。
だが、それを所持しているとすれば、零か館の主と考えた方がいい。
「……開きました。七がここに隠れていた可能性は高くなりましたね」
罠が発動する事なく、部屋は鍵によって難なく開いた。七や十が使用していたとなれば、当然か。
何度も罠の準備、解除をする時間もないはずだ。
「ドアを開けます」
カイトは恐る恐るではなく、一気にドアを開いた。




