誰が誰を
「死んでいた従者はメアリ様の従者代わりになるためだったかもしれません。本来、僕はこの場に来れないはずでしたから。全員を対等な関係にするために用意していたとしてもおかしくはないと思います」
「そういえば……アンタはここに来れるわけじゃなかったわね。今になっては予知自体が嘘か本当なのか分からないけど。メアリは従者を連れて来れないと連絡したわけだし。私達だけじゃなく、メアリにも監視を付けたかったはずよ」
七達が館の主に従っていたのであれば、キス達は監視下に置かれていた事になる。メアリにも監視を付けたいと思うのは当然。
しかも、彼女が本当に器だとすれば、下手に危険な目に遭わけるわけにもいかなかったはずだ。
「まぁ……メアリの性格を知れば、それが無意味だと分かるだろうけど。七達の補助をしてたかもしれないわね。その後は」
キスもメアリの事が分かり、カイトがいなくとも従者を付けないと判断したようだ。
三の身代わりで死んだ従者の役割は他の補助になり、生贄に取り入れられた。七達も最終的にはそうなってもおかしくはない。
「三も生きていると考えた方が良さそうね。……下手したら、すでに館内にいる可能性もゼロでは無くなったわ。結界のために魔法を残すのも考えないと」
キスは再度第二書斎を後にする。主の日記を探すのは時間が掛かり過ぎる。メアリを見つけるのを優先する。
「七が共犯者だったら、僕達が焼却炉に向かっている時に招き入れる事も可能ですね」
カイト達が館外の見回りを継続している間に、侵入者二人を中に入れる事が出来る。
七が一人になっても侵入者二人が襲わなかったのは、その必要がなかった。
しかも、それを七が黙っていた事で、二人が内部にいるのにも関わらず、結界で魔法の回数を減らせるようになったわけだ。
『メアリやキスが気の緩みがある時に、仕掛けてこなかったのも、七が直接手を下すと決めていたのかもしれない』
侵入者がすでに館内に隠れていた場合、キス達を殺害する機会はあったはず。
それをしなかったのは、誰が誰を殺すのかを決めていた可能性がある。
三はアルカイズを。七はキスを。メアリの場合は……
十が生存しているのなら、ディアナ殺害を彼の手によると考えるべきだろう。
彼の生存を知れば、彼女も部屋の中に入れてもおかしくはない。ディアナも本人だと確かめる事はしたはずだ。
『従者それぞれが自身の主を殺す。今思えば、ディアナも彼だと示していた』
「ディアナ様が十の生存を教えていた……ですか?」




