結果
「でしょうね。あそこまでの分身を魔導具で生み出すのは相当凄いと思うわ。回復魔法を持っているのも納得出来る程に」
自身の命が狙われているかもしれないのに、館の主の凄さをキスは素直に褒めている。
この分身を生み出す魔導具を開発した事により、回復魔法や予知魔法の信憑性がキスの中に生まれた可能性がある。
彼女はこの状況でも継承を諦めてはいないのだろう。
「とはいえ、分身の存在出来る時間があるわ。何かの行動をするたびに削られていく。攻撃をされたら余計にでしょうね。加えて、バレないように印象的な死に方を設定されていたかもしれない」
キスが灰色の侵入者をマスクを剥がそうとした時、諦めたように動かなくなった。あれは分身の効力が消えかけていた。爆発の方へ魔力を移動したとも考える事も出来る。
「理解しました。ですが、分身とはいえ、すぐに姿が消えないものなんですか?」
分身は魔力で体を形成されており、何時消えてもおかしくはない。それも体の一部が無くなれば、形を保っていられるのか。
「そうね。魔力が少しでも残っていたら、頭と体が分離しても問題ないわ。一度認識された場合、意識をリセット……そこから離れるまでは残る時もあるわね。その可能性もあるから」
キスはあの死体を再度確認するため、第二書斎のドアを回転させる。
「一度廊下に出てみたのよ。その結果……分身だと証明されたわね」
灰色の侵入者……七の死体が見事に消えている。肉体だけでなく、灰色の燕尾服まで。服装までコピーするようだ。
ただ、マスクだけは消えてはいなかった。マスクが魔導具である証拠だろう。頭の爆発もそうだが、変声の効果もあったはず。
「……ですね。そうなった場合……灰色の侵入者……彼は生きている事になります」
死んだのは分身であって、本人は無事という事だ。
時間を考えれば、七が死ぬ前に生み出したのは難しい。カイト達の前から消えた後の可能性が高い。
「……メアリを捕まえたのが、アイツである可能性があるわね。アイツだった場合、隙をつく事も出来るはずよ」
キスが言うアイツは七の事だろう。
メアリが死んだと思われた七の姿を見た場合、どう思うのか。
彼女なら、七を疑う事はせず、安堵するはず。七が協力すると言葉にすれば、簡単に騙さそうでらある。
「勿論、私のためじゃないわ。分身が意識を共有していたのなら、アレがアイツの本心。私を殺すつもりでいたんだから」
分身だとしても、キスに対する殺意は本物だった。
キスを殺そうとした時点で、メアリを捕まえたのは別の誰かのためになる。
それが館の主であるかどうか。