新たな問題点
「七が裏切っていたのなら、他の従者も怪しむべきでしょうね。アイツと違って、死体を見てはいるのだろうけど」
キスも自身だけ従者に裏切られたとは思いたくはないだろう。
カイトがそれに含まれていないのは、メアリの従者は最初から彼のみだった。
彼が来るのは予想外、予知から外れていた事を零も言っている。人形も最初から用意されていなかった。
「……ですね。鏡越しではあるのですが、十は刺された姿を。三は首なしの死体を」
十が背中を刺されたのは、死神の目で分かっている。あれは確かに十だったはずなのだが、死体が消えた方法は未だに分かっていない。
三は首なし死体であり、頭が見つかっていない。別の死体を用意すれば問題ない。命約を遮断可能な花瓶の魔導具もあった。
だが、あの死体は誰だったのか。三の体に近い死体を簡単に用意可能なのか。それも死体は腐ってなかった事から、時間も経過していない。
「アレがあるから……変に難しくさせるのよね。単に姿を消しただけなら、外であった二人がそうなんだと疑ってしまうんだけど」
館外で零とカイトを襲ってきた侵入者は二人。赤と黒の燕尾服を着ていたが、それは衣装室にあり、この死体が着ている燕尾服と形は同じ。
消えたのも十と三の二人であって、外と中にいたのも当て嵌まる。
『確かに三に関しては可能性はある。逃げた黒の侵入者は魔法使いでなく、三。そう考えれば、体格も似ていた』
黒の侵入者が魔法使いと考えていたが、館の主が関係しているのであれば、両方が従者の可能性がある。
『問題なのは赤の侵入者。七と三が共犯者であり、十だけが別であれば、納得出来ない事もない』
十が誰かに刺される姿を鏡越しに目撃されている。その時、三や七には無理だろう。
七はキスと行動しているはずであり、三がアルカイズを嵌めるのであれば、その時しかない。
零である事もないだろう。彼女は従者の部屋で休んでいた。メアリ達が訪ねた時には部屋にいただけでなく、キスは一階を調べていた事もあって、監視下にあった。下手に出て行く事は不可能だったはずだ。
となれば、あの時にいたのは館の主。魔法を使わずにナイフを使用したのは何故なのか。
死体を消失する方に使った。館の主も魔法の回数が制限されているのだろうか。
本当に侵入者がいた場合もある。勿論、それも館の主の従者であってもおかしくはない。
「ふぅ……情報は整理したわね。メアリを探しにいくわよ。鈴の音もそうだけど、ここまで待って、メアリがこの場所に来ないのは」
キスは情報の整理もあったが、自身の従者が共犯者であった事により、気持ちの整理も必要だったのだろう。
それだけではなく、メアリがこの場所に来るのかも待っていたようだ。
彼女はカイトが着る燕尾服の魔力を辿る事が出来、キス達が向うよりも正確に来れたはず。
だが、鈴の音の回数が違う事からして、捕まったのは間違いないのだろう。
キスは回数の事を知らなかったが、カイトの焦りから察したようだ。




