予知の否定説
「それは……私達が館に来る以前からと言いたいわけ?」
キスはカイトが何を考えているのかを察したのだろう。死体の調べるのを止め、部屋にある椅子に座った。
「……はい。ここに来てから、誰かに唆されたにしては、館内を把握し過ぎていると思います。謎解きに関してもそうです」
七がこの部屋……メアリ達が入れてない部屋で待機しているのもそう。ピアノ室の謎解きも、倉庫にあるヒントではなく、以前から知っていた可能性もある。
音楽に詳しくなければ、分かるようなヒントではない。まして、従者である七が音楽に触れる事があったのか。
「そうね。ここに来るよりも前……けど、七の前の主が館の主ではないわよ」
七は最初からキスの従者ではなく、別の魔法使いに仕えていた。
その魔法使いが館の主ではないと、キスは断言する。彼女はその魔法使いをよく知っていたのだろう。回復魔法や予知魔法を所持しているはずがないと。
「その主も七と従者を交換したのではないでしょうか? 館の主は零を残して、従者を辞めさせているようですが」
館の主は零以外を辞めさせたが、それには別の目的があった。この出来事に参加する魔法使いを選びに行った可能性はないだろうか。
「なるほどね。辞めさせた明確な時間も言ってないし、それ以前に従者を何人かを交換した可能性もある。そうなってくると」
『ディアナ、アルカイズ、キスが館の主に選ばれたわけではなく、七達がいるところを選んだ。勿論、三や十も共犯であればの話だが』
「アンタもそれに……含まれないか。けど、十と三も七と同じかもしれないわね。ディアナやアルカイズも新しい従者を連れて来てたわけだから」
メアリの従者はカイトだけであり、替えてない事はキスも理解している。
だが、キスを含めた三人の魔法使いの従者は、いつもとは別の従者、七達を連れて来ていた。
ディアナの場合、連れて来るはずだった従者が大怪我を負ったからという理由だったが……十が仕向けた可能性が出てくる。
『そうなってくると、館の主の予知魔法は本当にあるのか。予知があるとされたのは、従者達の人形が用意されていたからだ。本来連れている従者とは別人であった事は当てたわけだが、実際は……』
最初から来るのが分かっていたのはキス達ではなく、従者である七達。彼等が選んだ魔法使いを招待したのであれば、人形が最初からあってもおかしくはない。
だが、この死神の考察には難点がある。勿論、彼女もそれは承知しており、キスへの質問をカイトにさせた。




