ある部屋の考察
「アンタの正体は七。そうでしょ!!」
キスは侵入者が被っているマスクに手を伸ばした。それを脱がせば、何者なのかが分かる。
キスが言うように、侵入者が七の可能性はあるのか。彼が死んだ事を示すのは、キスの命約が切れた事のみ。
主であれば、命約を切る自体は可能。従者から切るのは不可能。だが、命約を遮断する魔導具はあった。であれば、切断する魔導具が存在してもおかしくはない。
七が誰かに殺されたと思われたが、それは自作自演。彼にはそれをする時間はあった。
カイトを花瓶の中に閉じ込めたのも、偶然ではなく、彼が仕向けた可能性が高くなる。助けた事までは分からないが。
『キスの言う通りであれば、幾つかの疑問、謎は解消されるぞ』
彼が侵入者の共犯者であれば、幾つかの謎は解ける。
一つは館内にいた侵入者が外に出て、カイトと零を襲った事に関して。
入口の鍵は壊されていたが、壊したのは侵入者ではなく、七。鍵をする前に、侵入者が通るのを許した。
『七が共犯者であるのなら、共にいた三や零も怪しい事になる』
この三人は一緒にいる事が多々あった。七が共犯者であった場合、逐一報告していた可能性がある。
『そうなると、従者の部屋で全員が眠らされた事も謎が解けてくる。君以外、眠っていなかったのではないだろうか』
「僕以外眠ってなかった? だけど、貴女は匂いを感じ取ったんですよね。僕は七達よりも毒耐性があるんですよ」
カイトは他の従者達よりも毒耐性が強い。それが睡眠薬だとしても同じ事だろう。
『それの解毒方法を用意していたのか。一度の匂いでは効かない物だったのか。三と零に関して、その姿を見ただけで、触れていない。七に関しても、念入りに調べる事は出来なかった』
三が倒れるのを見て、それを調べたのは零。カイトは三の体に触れていない。その後に倒れた零の体もそうだ。それ自体が演技の可能性がある。
七も二人と同じ。寝たフリをする事で、カイトを近寄らせて、睡眠薬の撒いた。
零が側に寄って来た時と、七の側に向かった時で二回の睡眠薬を吸わされた事になる。
『そして、三人……侵入者もいれるのなら、四人か。その人数がいれば、メアリとキスを眠らせる仕掛けを準備可能だっただろう』
ディアナ殺害時、メアリとキスを同時に眠らせるのは難しいと思われたが、七達が協力していたのであれば、難なくこなせただろう。
『とはいえ、それはメアリとキスを眠らせる方法だけであって、ディアナ殺害の謎は残ってるいるのだが』
三、七、零が共犯者であったとしても、ディアナが部屋を開けるとは思えない。三人の誰かであった場合、警戒するはず。無防備に背中を向けないどころか、部屋に入れる事もない。




