退出
「悪魔学の方ね。……アンタは謎解きに協力出来ないのだから、念の為に書斎から出なさい」
キスは魔法学の鏡に入る前に、零を書斎から追い出そうとする。
『メアリの事を考えるなら、誰もいなくなった方が安全ではある』
キスとカイトが先に転移をするのだが、メアリと零の二人になる。食堂では何もなかったわけだが、絵画室やピアノ室の情報で事情が変化するかもしれない。
零は館の主の従者であり、メアリが依代と知ったのなら、捕らえる可能性もゼロではないのだ。
「キス様!! それは」
メアリは零の事を少なからず信用している。キスとカイトが寝ている間、何も起こらなかったのだ。
この中で、彼女だけを退出させるのに、メアリは納得出来ないのだろう。
「大丈夫です。私もこれ以上の協力は出来ないですから。一人で行動するのも、メアリ様と同じです」
零は反対する事なく、素直にキスの提案を受け入れた。単独行動になる事で、襲撃な合う可能性を考えるなら、少しは躊躇いも出そうなところではあるのだが。
メアリも一人で行動するのなら、文句の一つも言えないだろう。
もしくは、襲われる事がないのは分かっているのか。
「そうですが……無理をしないでください。まだ腕の怪我は治ってないのですから」
零にこれ以上無理を言うのも、板挟みになるだけであり、メアリは諦めるしかなかった。ほんの僅か時間であるが、キスがメアリを心配しているのも分かっているからだ。
「それでは……御武運を。再会出来る事を祈ってます」
零はそう言い残して、書斎を出ていく。
その後、キスは内側から書斎に鍵を掛けた。
「キス様!! そこまで」
「アイツだけを注意してじゃないわ。七を殺した奴を警戒してよ。鏡の残ってる魔力では追えなくてもね」
零が退出したところで、七を殺した相手が侵入してくる事もある。
それだけでなく、残ってる神学側の鏡を試す可能性もゼロではない。それによって、報酬が相手の手元に渡る可能性もあるのだ。
「神学側の鏡に行かれるのも困るわ。それが館の主だとすれば……追ってくる必要はないのだけど」
館の主であれば、鏡の魔力を注ぐ事が出来る。そんな魔力が残っていればの話だが。
注ぐ事はしなくても、ゴールド=ゴールは鏡の転移先を知っているはず。そこへ普通に移動すれば良いだけ。
零が簡単に書斎から出て行ったのも、メアリとキスの行き先を館の主に報告する可能性もある。
『……転移後は注意した方がいい。彼女の言葉が気になる』
「零は僕達の心配しただけだと……」
『御武運をというのは、何か起こる事が分かっている気がする。下手すれば、戦闘になり得るぞ』




