鏡の選択
「助かります」
メアリはキスに頭を下げた。魔法が一回でも使つ使えないのでは雲泥の差だろう。
侵入者と相対時以外にも罠対策にも使う可能性もあり、部屋の解錠にも必要かもしれないのだ。
「壱もいいわね。これは主であるメアリの命令でもあり、私の命令でもあるから。検討の余地もないわ」
「……分かっています。僕はキス様と行動する。そして、メアリ様と合流する事」
カイトもキスに返事を返した。
「アンタにとって、それが一番重要かもしれないけど、館の主の手かがりを見つける事が重要よ」
転移先に何があるのか。それを確かめ、館の主の居場所を掴まなければならない。
「そうですね。私の安否よりも」
「……と、言いたいところなんだけど、賛成してあげるわ」
メアリもカイトが自身よりも情報を優先するように言うつもりだったが、キスはそれを制して、賛成の言葉を投げた。
「合流した後でも調べる事は出来るわ。変に長居した方が危険よ。メアリもそれでいいわね」
メアリと合流する時点で、その場所への行き道は判明している。再度、調査は可能のはず。
調べるのを優先して、メアリを犠牲にするのは、キス自身の危険を増す事になる。
「合流が優先で良いのですね」
「転移場所が分かる時点で情報は手に入れてるから。私もメアリが来るのを待つだけじゃなく、動くから」
メアリはカイトに宿る自身の魔力によって、キス達のいる場所まで向うつもりであり、彼女達は動かない方が懸命。
それはメアリが罠に掛かるなどして、捕まってない状態の場合だ。
やはり、どちらも動く事が良い。危険が迫っている事は、メアリとカイトが持つ鈴で知らせるべきだろう。
「分かりました。キス様はどの鏡を選びますか? 私が先に」
「先に転移するのは私達。タイミングを考えると、そうなるでしょ」
メアリが先に転移した場合、キス達が転移したタイミングが分からない事になる。そうなれば、彼女達が転移する前に、魔力を辿る事になった時に混乱するだろう。
「それと……私が選ぶのは魔法学の本棚に出てきた鏡。手記を隠すなら、こっちの気がするわ」
キスは魔法学の鏡を選ぶ。神と悪魔の数字とは関係がなかった魔法学。
混血による独自な魔法、回復魔法や予知魔法の情報があるのは、こちらだろう。手記も一緒に残している可能性はある。
「魔法学の鏡ですね。でしたら、私は悪魔学の鏡を選びます。館の主が儀式をするつもりなら、こちらに何かあるかもしれません」
メアリが選ぶのは神学ではなく、悪魔学の本棚に隠されていた鏡。
生贄や儀式が関係するとすれば、悪魔学の鏡から転移させると考えたのだろう。




