賭け
「キス様の言う通りです。メアリ様一人で動く事になるんです……危険過ぎます」
キスも納得していないのであれば、カイトも反対する事が出来る。
『メアリであれば、キスの事も気遣うだろう。君を守るにしても、攻撃魔法が得意なキスの方が安全だ。その代わりに盾役にされそうでもあるが』
メアリであれば、従者達の心配をするように、キスの安否も気にするはず。カイトにとっても、キスと行動した方が安全だとも考えてはいそうだ。
「分かっています。転移した後、何処に飛ばされるのか分からない以上、全員が無事に合流するための方法だと、私は考えてます」
「私達が無事に合流するため? 危険なのはメアリなのよ」
「ある意味で賭けにはなると思います。これはあの絵が私に似ていて、体を依代にすると踏まえてです」
「それは……捕まる事があっても、私や壱が殺されるまでは無事な可能性があるって事よね。確かに賭けではあるわね。その間に私達が助ける事も出来るかもしれない」
『儀式がどういう風にするつもりなのかは分からないが、私も依代にする者を最後にする。生きたまま依代にする可能性もある。殺すにしても、新鮮な方がいいはずだ』
死神もメアリの生存する可能性が高いと考えているようだ。
魂をメアリの体に呼び出すにしても、良い状態にしておきたい。殺してしまえば、時間の経過と共に腐っていくのだから。
「それだけではなく、私がキス様を捜すにため、壱が側にいてくれた方が良いのです。そうすれば、魔力を探知可能ですから」
カイトがキスの側にいれば、燕尾服に宿った魔力で、メアリは二人が何処にいるのかを辿る事が出来る。
そこが魔力を遮断する場所であるなら問題だが、カイト達も移動すれば良い話になる。
「それに……これもあります」
メアリが見せたのは鈴の魔導具。カイトが侵入者と戦闘してるのを、彼女に知らせてくれた。
カイトが花瓶の中に吸い込まれた時、魔力は吸収されたわけだが、補充はされているようだ。
「鈴が鳴れば、何かあったのか分かるだけでなく、居場所も教えてくれるかもしれません」
鈴の音で居場所を判断出来るかもしれないが、それは侵入者、館の主にも聴こえてもおかしくはない。
「……分かったわ。メアリの案に乗ってあげる。けど、壱と一緒に行くための魔法を使うのは、メアリじゃなくて、私よ。ここでアンタが使えば、身を守るための魔法が使えないでしょ。結界のための魔法分もあるんだから」
キスはメアリに魔法を使わせず、自身で使う事を選んだ。本来、ピアノ室や七の自室を開くために魔法を使うつもりだった。その分だと割り切る事も出来るのだろう。