三つの鏡
カイトは次に神の数字を本棚に当て嵌めていく。
メアリが神学の本棚から抜き取り、それを彼が入れていく形になった。
「これが最後の一冊です」
「心構えは出来てるわ」
「壱も気をつけてください」
メアリとキスの了承を得て、カイトが神の本棚に最後の一冊を差し込んだ。
「本棚が回転?……それ以外は……悪魔の数字と同じ……何も起きま」
謎解きは正解だったのか、神と悪魔の本棚は解錠したかのように、本が落ちないように仕切りが張られ、半回転。それ以外に何も起きないように見えたが。
「起きたわね。悪い予想は当たる物だわ」
二つの謎解きが重なり合う時間が必要だったのだろう。
「それも最悪な形でね」
「……はい。これが報酬という事ですか」
書斎内に変化が起きた。神学、悪魔学、魔法学の本棚が横へスライドし、後ろに隠されていた物をメアリ達に見せる事に。
「……七達の死体でない事が救い……見つけた方がいいとは思うのですが」
三つの本棚の後ろに消えた従者達の死体でもあれば良かったが、そうではなかった。
書斎には鍵がされていて、謎を解かない限りは本棚も動かせない。
死体を隠すのは不可能に近い。近いというのは、ゼロでもないという事。
書斎の報酬で出てきたのは鏡の魔導具。それぞれの本棚の後ろから一つずつ。
鏡の魔導具の効果は様々。物の保管庫となる物もあれば、鏡に映った者の分身を生み出す事も。
鏡と鏡とを繋ぎ、その場へ転移させる効果もある。他に説明されていない要素もあるかもしれないが。
衣装室の謎解きに使用した鏡の魔導具は、転移と保管庫としての用途だった。
今回、鏡から物が出てくる事もなければ、映し出した者を分身させる事もない。
一番可能性が高いのは転移の効果だろう。
十のように吸い込まれる事がないのは、少し離れているせいか。それとも、そこまでの魔力が鏡にないのか。
「全員で一つずつ試していくのは……無理そうね。私達の魔力で補充して、何が起こるかも分からないわけだし」
「私もそう思います。ディアナ様の従者、十が転移した時も一人が限界でした。この鏡にあるのは、それ以下の魔力な気がします。戻って来れる時間はなく、行ったきりになるかと……」
十が転移した際、戻る時間は僅かにはあったのだが、少しでも情報を得るために、探索をしたのが悪かった。
今回はそれを踏まえて、すぐに戻るという選択肢が消えている。
魔導具に魔力を注ぐにしても、合わなければ壊れる可能性もある。それだけでなく、行き先の鏡の魔導具の魔力も関係している。
この場にある鏡だけでは意味がないのだ。




