分断
「……間違ってはいないと思います。僅かなながらに音が聴こえました。神の本棚と両方を合わせないと駄目なんだと思います。片方ずつに報酬があれば良かったのですが」
その音を聞いたのはカイトではなく、死神だ。悪魔学の本棚付近から音が聴こえたらしい。
謎解きの失敗により、カイトに何かしらの罰が訪れない以上、その音は仕掛けの一部が作動したのだろう。
「私も聴こえなかったけど、答えを出すのは神の本棚をしてからでしょ。報酬はその時に二つ出てきてもおかしくないわ」
キス達が報酬として求めるのは、館の主の居場所が記された物。だが、まだ開けてない部屋がある以上、その望みは薄い。
鍵や館の主の情報が有力だ。その中でも、メアリ達はゴールド=ゴールの手記を入手したいだろう。
その内容によって、館の主に対する行動、対策が変わってくる。
継承が嘘であれば、館からの脱出。もとい、館の主を倒す事も。キスの性格的に、約束を違えた事で、報復を選びそうだ。
「報酬が二つ……ピアノ室もそうでしたね。それに……」
メアリの言葉が詰まったのも、衣装室の事が頭を過ったのではないだろうか。
鏡の謎解き。二つの鏡を使い、決められた数字を服装の色で計算していく物であり、それをカイトと十が解いた。
カイトを映した謎解きの鏡から出てきた報酬は、書斎に使用する白黒の本。
それは良かったものの、十は鏡の魔導具による転移。それによって、侵入者と遭遇し、殺害される事になった。
侵入者は誰かがその場に移動してくる事を、館の主から知らされていたのか。
『神と悪魔。報酬が選択肢の場合もありそうか。メアリとキスを分断しやすくはある。メアリもそれを危惧した可能性はあるか』
七の部屋で鍵を見つけた以上、館の主は謎解きを続けさせるつもりだと予想している。
ピアノ室では先に謎解きをされていたわけだが、本命は書斎という可能性もある。
神と悪魔はどちらに付く等、いかにも選択肢がありそうな言葉ではある。
勿論、それは謎解きの解答をすれば分かる事だ。
「ディアナの従者の件ね。アレは侵入者がいたせいでしょ。謎解きは神と悪魔の数字を表す事だけど、書斎には魔法学もあるから。まずは答えを出してからでしょ」
書斎には神と悪魔に関連する本だけではなく、魔法学の本も置いてある。
二つを合わせる事によって、魔法が分かるようになるのなら、報酬は魔法学の本棚から出てきてもおかしくはない。
それが回復や予知の魔法に関してなら、尚更だ。館の主がその知識を書いたのであれば、一緒に手記も置いている可能性もあるのではないか。




