十中八九
この事件で最後まで生き残り、殺されたのはメアリ。
メアリは従者を連れずに来て、他者を疑うような性格もしてない事から、一番狙いやすかったはずなのだ。
その上、キスとメアリが生き残るとすれば、攻撃魔法を得意とするキスの方が高い。
キスがメアリを庇う事も考えられたが、彼女の考えの方がしっくり来る。あるとすれば、メアリがキスを庇う方だろう。
『別の世界でもそういう儀式は存在していた。依代、器が生きた状態の時もあれば、死体の時もある』
「メアリ様はそのために……」
『地下に儀式らしき物の準備がされていたら、確定に近いだろうが』
地下の入口はまだ発見出来ていない。書斎や絵画室の謎解きの報酬なのか。鍵が掛かっている部屋は二つ残されている。
それを発見出来たとしても、読み解くにはカイトでは不可能であり、魔法使いが必要だろう。
メアリが生き残った状態で、地下へ行くしかない。もしくは、キスが……
館の主はメアリを最後まで残したいだろうが、謎解きの失敗がある。それをメアリとキスのどちらがするかを、彼が選ぶ事は出来ないはず。
「儀式の準備がされていたとしても……失敗に終わったんですよね」
死神は儀式が失敗に終わっている事を告げている。別世界から何者かが召喚された事はないという事だけだが。
それが事実であれば、メアリ達の死は無意味に終わった事になる。
『そうだ。召喚に失敗しているのは確かだ』
死神はそれを断定している。記憶の本では、それを知る事は出来ないはずだが。
「そうなってくると、十中八九、館の主が犯人という事になりますね」
残っている人物を考えれば、犯人は館の主以外はありえない。侵入者は共犯という事になる。
零も当初は館の主から何も聞いていなかったが、途中で聞かされた可能性もある。
それでも、黒幕は館の主になるのだろう。状況的に彼しかいないのだ。
だからといって、擬似的世界が終わる様子はない。
状況的に犯人は館の主だと、カイトが思っているに過ぎない。証拠だけでは意味がないのだ。
『だとしてもだ。覚えているか? 証拠を揃えるだけでは意味がない。犯人が犯行を認めなければ、君の勝利にはならない。私も認めない』
証拠を揃えるだけでなく、犯人にそれを突き出し、犯行を認めされる事で、事件は解決となる。
館の主が犯人だとしたら、カイトは彼を見つける必要があるという事だ。
十中八九そうだとしても、絶対ではない。
『謎解きの答え合わせが必要だ。納得出来る回答でなければ、犯人でない可能性が出てくる。なんせ、従者達の死体消失、ディアナ殺害等の謎を何一つ解いてないからだ』
犯人は館の主だとしても、その方法が何一つ判明していない。魔法だけで解決出来るわけではない。
それを答える事が出来なければ、犯人とは呼べないだろう。
死神もカイトと共に謎解きをしているわけだが、最後の解答を出すのは彼の仕事だ。