類似
「キス様は一体何が分かったのですか? 私には全然」
メアリは絵画室を出て、早々にキスへ質問を投げ掛けた。部屋を出た時に答えると、彼女が言っていたからだ。
「壱……アンタも気付かなかったわけ? 逆にそう思わないのかもしれないわね」
キスはメアリに答える前に、カイトが答えられるかを試した。メアリは無理でも、彼であれば答える事が出来る可能性があるらしいのだが。
「……僕も全然思いつきません。キス様がそう言っている意味も」
「似ているのよ」
「似ている……ですか? ピアノ室にあった老人とは似てはいないと思うのですが」
ピアノ室の絵を見た後にその言葉を聞いた事もあり、メアリは似ている人物を勘違いしているようだ。
「……キス様が貴女の事を知っているというのは」
『……ない。私と会えるのは限られた死者だけだ。この場から、私の姿が見えるはずもない』
死神と会うのは限られた死者のみ。未解決事件の関係者であり、未練のある人物。
今回はカイトがそれに該当したわけだが、擬似的世界では、死神の声は聞こえはするが、姿を見る事は出来ない。当然、メアリやキスもそれは同じ。
『君も一度は思ったはずだぞ。この絵と私は別人ではあるがな』
「……僕が思った事ですか? 貴女とあの絵は別人だとして……そういう事ですか!?」
カイトもあの絵が誰に似ているのかに気付いた。
彼が死神と出会い、擬似的世界でメアリと再会した時に感じた事だ。
死神とメアリは似ていると。一時的ながらも、カイトはそう見えてしまった。
それを死神も感じ取ってはいたのだろう。
カイトもメアリと一緒に行動するにつれ、その認識は消えていったのだろう。雰囲気の違いもある。
死神とあの絵も姿見だけでなく、雰囲気も似ていた。メアリよりも死神の方へ意識を向けてしまっていたのだ。
「あの絵じゃないわよ。メアリ……貴女と似ているの」
「私ですか!? ですが、先程も言いましたが、私は館の主と面識がありません。それに髪や瞳の色も違います。決して、謎解きの絵が私だという事は」
キスの回答に、メアリは即座に否定する。彼女も自身の事だとは思っていなかっただろう。
「それは分かってるわよ。相手が年を取らなかったとしてもね。そうだった場合、私やディアナ、アルカイズを呼ぶ必要はないもの」
館の主が会いたい人物がメアリであれば、キス達を呼ぶ必要はなく、魔法を継承させるのも、メアリにすればいい。
そもそも、そこまで生き続けてられているのであれば、カイトの呪いも簡単に解けているのではないか。