手助け
「侵入者が七を狙ったとしたら、キス様と壱が寝ている間に襲ってきてもおかしくはなかったかもしれませんね」
零は付け加えるように言ってきた。七を殺すぐらいの実力があれば、カイトとキスが寝ている間に襲う事も可能だったはず。
零は腕を怪我しており、メアリも休んだとはいえ、万全な状態とまではいかない。
全員は無理でも、誰かを道連れにする事は出来ただろう。外には侵入者が残っているのだから、メアリ達を殺すのが目的であるのなら、達成しやすくなる。
それとも自らを犠牲にするつもりはなかったのか。
「確かに……気の緩みもあって、反応が遅れてもおかしくなかった。全員が殺されていたかもしれませんね」
メアリは反省した顔を見せる。その時間はメアリと零が談笑していた。
この時間に謎解きをされた可能性があり、自身が狙われた可能性も。
「あの時の事を言ったら、私も同じでしょ。休む事に同意したんだから。……この謎解きを引き摺っても仕方ないわ。次に行くわよ。書斎の謎解きは流石に無理でしょ」
キスは気持ちを切り替えて、書斎の謎解きに向う事をメアリ達に伝える。
書斎の謎解きはメアリの役目。ヒントも揃っており、後はそれに合わせた計算をする事のみ。
書斎の鍵はカイトが所持している事から、侵入者が謎解きをするのは、魔法使いでなければ不可能。
「分かりました。書斎の謎解きはキス様達が用意してくれました。壱、頼みましたよ」
当然、答え合わせをするのは従者である、カイトの役目。
「任してください」
「時間も勿体ないし、本を選ぶぐらいは手伝ってあげるわよ」
「ありがとうございます。勿論、それに私も協力します。私が悪魔学、キス様は神学でよろしいですか?」
「構わないわよ」
書斎の謎解きには神学と悪魔学の本を使い、計算が必要とされる。それも計算だけでなく、本棚に入る本の厚さを考えなければならない。
その補助をキスとメアリがする事に。
カイトがするのは本棚にそれを嵌め込む事。答えが間違ってた場合、一番危険な役目がそれだろう。
これに関して、零も口出しをしてこない。謎解きに協力してはいけないからだ。
それを館の主が破った可能性があったとしても、確実とは言い切れない。
キスとメアリはピアノ室から出ていく。それをすぐに察して、先に零がドアを開けた。
最後に出る事になったのはカイト。それをキス達が許したのも、謎解きをするのが彼だから。心の準備のためにも時間の猶予を与えたのかもしれない。
「……ピアノ室の謎解きについて、どう考えますか?」
カイトは最後に出る事になったのは、死神に話し掛けるため。時間は止まるが、表情の変化をキス達に見せるわけにもいかない。