目覚め
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「カイト、大丈夫ですか?やはり、魔力を全部吸い取るべきでしたね。もう少し休んでいてください」
「……メアリ様!? 申し訳ありません。僕が起こしに行くべきところなはずなのに、寝坊するだなんて。数ある魔法なのですから、魔力を吸うのは止めてください」
二日目が始まった。時間は五時四十五分。六時に食堂へ集合して、そこから継承権の争奪戦となる謎解きが開始となる。
そんな重要な出来事にカイトがメアリを起こしに行くべきところを、彼は寝坊してしまったのだ。
「だ、大丈夫です!! メアリ様が魔法を使う必要はありません。それに重要な場なんです。僕も同行しなければ、ここに来た意味がありませんから」
従者の部屋にいるのはカイトとメアリのみ。十や三、七は早くにも行動を起こしているのだろう。
「すぐに着替えます。メアリ様は外に待って……いえ、気になる場所を調べていてください」
カイトが着替えるためだけに、メアリを部屋の外に待たすわけにもいかない。それならば、彼女に従者の部屋を調べて貰った方が時間の有効活用が出来る。
色違いのベッドやそこにある数字。クローゼットにある人形等、人伝で聞くよりも見たり、触れたりした方が分かるという物だ。
「……分かりました。急がなくても構いませんからね」
カイトの体を優先しての発言なのだろうが、そうも言ってられない。集合時間に遅れでもしたら、キス達に何か言われるのはメアリになる。
「カイト以外の従者が使用したのはどれですか? 勝手に触れるわけにもいきません」
魔法使いであれば、勝手に従者の物に触れたりするのは構わないはずだが、一番優先されるのは主。同じ場所にいる以上は、主の許可は必要だろう。
「赤、青、白とキス様、ディアナ様、アルカイズ様と同じ色を選んでました。館の魔法使いの従者である零は何処なのかは分かっていません」
『君が起きている間に彼女は戻ってくる事はなかったからな』
死神がカイトへ声を掛けてきた。それに対して、カイトは思わず愚痴を零した。
『何で起こしてくれなかった? 私は君の目覚まし時計ではないからね。君が目を覚まさない限り、そちらの世界を見れないのだから仕方がない』
死神が擬似的世界の二日目のページを捲って、話を進める事が出来たわけだが、その始まりはカイトが目を覚ましたところからになってしまう。
『終わってしまった事だから、気にしても仕方ない。気にしてる場合でもないだろ? 今日から本番といっても過言ではないのだから。頭がまだ回ってないのなら、寝る前の事を整理していくがいい。私との会話で、それぐらいの時間は融通しよう』
カイトは死神に従者の部屋に行った後の事を振り返った。
クローゼットに無かったはずの人形があった直後からになる。




