継続
「まさか!! ここまで来て、継承を諦める程馬鹿じゃないわ。鍵があるお陰で、魔法を使わなくて済むのは好都合よ」
キスは継承争いから端から降りるつもりはなく、メアリを安心させる。キスが継承したとしても、彼女の目的は達成出来るからだ。
謎解きのために鍵が必要であり、それが無かった場合、最終的には魔法を使用するだろう。
とはいえ、メアリ達の記録からは開けられてない部屋がある。
それを考えると、魔法で開けなかったのかは疑問に残るところだ。
回数制限もあったのだろうが、その部屋自体に魔法が使えなくなっていたのか。
「ここまで御膳立てがされてるのなら、次に行くのはピアノ室ね。さっさと自室を調べるわよ」
「分かりました。先にキス様が部屋を調べてください。私がそれを確認します。壱は引き続き、零が全てを見終えるまでは、待っていてください」
キスは早々と自室に入っていく。彼女自身が用意した魔導具の鍵ともあって、魔力に反応したのか、ドアノブに触れた時点で鍵が開いた音が聞こえてきた。
この時点で、キスの部屋には誰も入ってないと想像出来る。
「分かりました。廊下の方はどうしますか?」
カイトが零、メアリがキスの動きを見ると、廊下を確認するのが疎かになる。その隙を着くのは難しいだろうが、不可能ではない。
アルカイズが得意としていた気配遮断の魔法。彼よりも上手くはないだろうが、館の主なら出来るかもしれない。
「でしたら、廊下も私が見ます」
廊下もメアリが見る事に。どちらを警戒するべきかになると、キスよりも館の主の動きだろう。
カイト、死神の目が良くても、そこは魔法使いであるメアリが見た方が確実ではある。
それに加えて、キスと零の警戒度でも、彼女の方が高い。信用しているだろうが、主の事を考えるとそうなる。
カイトとメアリが話をしている間に、二人は部屋の確認をしていく。
零は人が隠れる事が出来るスペースを重点的に調べていくのを、カイトは目にする。
キスに至っては、ものの数分で終わり、零よりも先に終えてしまったようだ。
彼女は一度眠らされている事から、警戒度を上げていた。そのための魔導具を置き、それを見るだけで済んだのだろう。
メアリはキスと交代し、キスが廊下の警戒と、メアリが部屋を調べるのを確認。
両方共に何もなし。
零も七の部屋を調べ終えたが、七の死体が隠されていた事はないようだ。
最後にカイトの自室となった客室。
そこは鍵はきちんとされており、何かが動かされた形跡もなし。残り三人の人形のどれかが置かれている事もなかった。




