七の部屋
『七の客室が開けば、零が館の主ではない事が分かるが……それを提案する事自体が怪しいとも取れる。それが最低限の協力だとしてもだ』
客室が閉じていれば、零が館の主である可能性が残るわけだが、提案したのも最低限の協力になる。
本当は七の客室は避けるはずだった。キスの魔法で解錠するつもりはなく、ピアノ室の方を選んでいた。
それを零は七の客室を調べる事をねじ込んだ形になる。
キスとしても痛手とはならないのだから、試されせるのは当然だ。
「七の自室、客室前です。行きます」
零を先頭にして進み、七の客室前に辿り着いた。
『どの世界においても、こういう展開になった場合、大抵は何か起きてしまう』
すでにフラグが立っていたかのように、零が握ったドアノブは途中で止まる事なく、開く音を鳴らした。
「……鍵は掛かってないですね」
零も驚いてはいるが、それが演技なのかどうか。勿論、零が鍵穴に何かしたわけではなく、鍵も所持していない。
「そのようね。……ここでアンタが開けて、主がいたとすれば、悪いのはあっちの方だから」
主は身を隠している身でありながら、この場にいるとすれば、それは従者のミスではない。
二人か継承権を手に入れる事になるのも、自業自得という事になる。
「……流石に攻撃してくる事はないですよね」
七を消したのがゴールド=ゴールだった場合、キス達に攻撃を仕掛けてくる事もあるのか。
「分からないわね。どっちみち、攻撃を受ける事になるのはコイツになるだけよ」
ドアを開けるのは零。攻撃を仕掛けてくるなり、罠を設置していたとしても、受けるのは彼女になる。
「……それを考えると、彼女に裏があるとは思えませんね」
『自ら罠に嵌まる事はないか。侵入者から攻撃を受けた時点で、共犯説が薄まっている。上乗せしたはいいが、失敗で死ぬ事もあるだろうな』
零に協力するにあたり、裏があったとして、攻撃を自ら受ける事は危険過ぎる。
疑いが解消されそうな中で、それをする意味はない。七の自室を開けるのは、本当に善意の協力となるのではないか。
「ここに七の死体があったら、それも問題になるわね」
死体は最初から部屋にあったのか。だとすると、キスは隣に行われた殺害に気付かなかった事になる。魔力が途切れた事もそうだ。
勿論、死体をこの部屋に後から運んだ可能性もある。突如、消す事が出来れば、出現されるという逆の事も出来てもおかしくはない。
零はドアノブを持ったまま開けないのは、キス達の指示、気持ちの整理するのを待っているのだろう。
「……開けなさい」
キスの声により、零はドアを開けた。