勘
「後……僕の勘がそう言ってます。自分達と同じだと……三や七の二人も、零が従者である事に違和感がなかったと思います」
死神からの返事はない。会話の出来る時間が過ぎたのだろう。
時間を回復するのに、メアリ達を待たせるわけにもいかない。
死神の零=館の主説は保留する事にしても、零に対する信用を一度無くし、猜疑心を持つべきだろう。
カイトにとって顔を洗うのは、気持ちを切り替えるのに丁度良かったのかもしれない。
「お待たせしました」
「構わないわよ。零を先頭にして、言ってた通り、先に自室に戻るわ」
「壱も自室を確認してください」
「分かりました」
メアリとキス、零は会話を終えていたのか、静かに待っていた。
館外の出来事により、二人の零に対する疑いは低くなっているはず。館の主に対して、零の態度がそう思わせる面もある。
「アンタも分かってるわね。自身で言った事よ」
カイトが浴室に入っている間に、零はキスに何かを提案したようだ。彼女の言い方からして、危険な行為なのかもしれない。
「勿論です」
「……零は何をするつもりなのですか?」
カイトは零の行動について、零自身に尋ねた。
「キス様達が部屋を確認している間、廊下で待機するのは勿論だけど、七の部屋に鍵が掛かっているかの確認を、私がする事にしたの」
零は七が休むはずだった客室の鍵を確認するようだ。しかも、それを彼女自身が名乗り出たらしい。
「キス様にも許可を得ました。彼の代わりに出来るのはこれぐらいです。謎解きに手を出す事は禁止されているので」
七の部屋を調べるのは、謎解きとは無関係。零がキス達と行動するにあたり、手を貸すところでは妥当だろう。
「勿論、私達も廊下から見させてもらうわ。零だけではなく、私やメアリも同じ。ドアを開けた状態にするから」
全員が一斉に自室を調べるわけではなく、一人一人順番に見ていくようだ。その中で、部屋に入るのは当人のみ。
最初に零が七の部屋を確認。七は鍵を所持したままで消えてしまった。
彼の自室になるはずだった客室は鍵が掛かったままのはず。
だが、七を消した相手が鍵を使用した可能性もゼロではない。
それともう一つ。カイトが花瓶の魔導具に吸い込まれた後、七の行動も分かっていないのだ。
彼が一度客室に戻っていてもおかしくはない。
キスと七の命約が切れたのが深夜であるのなら、時間的にもありえるのだが……
『君が花瓶に閉じ込められていた時間に、七が戻った可能性はあるが、鍵をしているはずだ。キスが一番最初に調べるのは、彼の客室のはずだ』
命約が切れた時、キスは七の客室を覗くはずであり、その時点で鍵が掛けられていたのだろう。
ピアノ室と七の自室が閉じられている事は、キス自身が言っていた。魔法を使用するかも悩んでいたぐらいだ。




