例外
「確かに……彼女には怪しい面があります。館の主であれば、納得出来るところも幾つかありますが……僕は違うと思います」
カイトは死神の零=館の主説を否定した。
『何故そう思う? 確かに当て嵌まる事が多いだけで、全てがそういうわけではない。これも一つの考えに過ぎないのだが』
死神も否定された事に怒らず、カイトの話を聞こうとしている。一つずつ可能性を潰していかなければならないからだ。
擬似的世界だとはいえ、ここは魔法使いの世界。死神も彼の意見を参考にするべきところだと思っているのだろう。
「彼女が魔法使いだったら、メアリ様やキス様も気付くと思うんです。混血だとしても、魔力はあるはずですから」
魔法使いには魔力がある。メアリは零に対して、感視を使っている。感視は感情を色で見るのだが、魔法使いであるなら、魔力による抵抗が少なからずあるかもしれない。
それに対して、メアリがキス達に何も言わなかったのは、耐性が無かったからではないだろうか。
「次にメアリ様の共感魔法が発動した事です。その時、零は自身が館の主である事を告げてしまうのではないでしょうか。これに関してはメアリ様しか分からないと思うのですが」
メアリの共感魔法。相手がある事で共感する事により、情報を引き出してしまう。
それによって、館の主が混血である事が分かったわけだが、自身の体験であれば、館の主だと打ち明けてしまうのではないだろうか。
同じ魔法使いだから、自然と抵抗し、ある程度の情報で済んだのか。
これに関して、メアリしか分からないだろう。
『なるほど……メアリの共感魔法か。確かに他者ではなく、自身の事のように話していれば、メアリも違和感に気付いてもおかしくはないか』
死神はメアリの共感魔法について、そこまで詳しくなく、見落とすのも無理はない。
『メアリ達が零から魔力を感じなかったのは、魔力自体が無くなった可能性もあると思っていたからな』
魔法使い達全員が零から魔力を感じ取っていない。館の主は結界を張る程魔力は残ってなく、庭に設置している像にさえも魔力を入れてなかった。
魔力の低下もあるが、それ自体がすでに無くなっているのでないかと、死神は疑っていたようだ。
とはいえ、例外がなくもない。
カイトの体にある呪い。蓄積される魔力だ。
これはディアナやアルカイズ、キスも探知出来なかった。メアリでさえも、カイトの顔色や不調でしか分からない。
探知されないようにする方法はあるという事だ。
「もう一つ。七を彼女が殺せたのかどうかです。彼女が館の主だとして、この場で魔法を使うのは難しいはずです。片腕で七を襲う事は無理なのではないでしょうか?」
館にいるメンバーを考えれば、七を襲うのは館の主しかいない。従者の部屋で休んでいた零も可能であるが、あの体で七を相手に出来たのか。
不意討ちをしたにしても、零に傷の一つでもつけそうだ。尚且つ、七の死体が消えただけでなく、殺害現場すら分かっていない。