短命
『いや……私としては零の言葉に嘘が紛れていると思う。それが一部なのか、全ての可能性も考えられるぞ』
それを死神は否定した。
零が言葉にした館の主の姿について。
性別は男性。年齢はアルカイズよりも年上。背が高く、細身。運動が苦手なのは、魔法使いではよくある事だ。
この中に違和感があるとすれば、どれなのか。
『思い出してみろ。魔法使いと従者の間に出来た子供についてだ。館の主はそれなのだろ?』
「そうらしいですね。メアリ様もそうですが……」
魔法使いと従者との混血。魔法使いになれるのはほんの一握り。先天性と後天的な場合もある。
魔法使いにならなくとも、突出する才能を持つ事もあるらしい。
零も混血らしいが、死神が言っているのは館の主に関してだ。
「混血は純血の魔法使いよりも魔力量が少なくて、新しい魔法を生み出す事がある。館の主は回復魔法に目覚めたわけですよね?」
メアリの持つ感視や共感魔法がそれだ。彼女は人の態度に敏感な事で目覚めた。
館の主が持つとされる回復魔法は一度も目にした事がなく、信憑性があるかどうか。
しかし、先程の会話の中で、回復魔法に触れる事はなかった。
死神もカイトの言葉に何も反応していない。
「……そうだ!! 混血の魔法使いは短命。アルカイズ様よりも年上なのはおかしいんだ」
『そういう事だ。混血が短命というのは嘘ではないはずだ。そこはメアリやキスも否定していない』
短命説はメアリやキスも知っていた。混血の大多数がそうだったのだろう。
『例外もいるかもしれないが、ゴールド=ゴールは違う気がする。そこまで長生きしていれば、有名になっていてもおかしくはないはずだ』
唯一の混血の長命者であるなら、魔法使いであるなら名乗り出てもおかしくない。
しかも、回復魔法まで使えるのだ。ゴールド=ゴールの本物と同じぐらいの快挙になっているはず。
『加えて、ディアナ達よりも年上であるとすれば、混血に対する扱いは更に酷かったはずだ。弟子に取ろうとしただろうか』
キスは混血の魔法使いに対する扱いは、ディアナやアルカイズであれば、酷い扱いをしたはずだと口にしている。
その時代の魔法使いは混血を認めていなかった。それよりもゴールド=ゴールが年上であれば、師匠となる魔法使いは本当にいたのか。いや、いないだろう。
それを考えると、零は主の年齢に関して、嘘を吐いた事になる。
その理由は何か。嘘はそれだけなのか。全てが嘘だと感じてくるだろう。




