行動順
「お待たせしました」
このタイミングで、メアリとキスが浴室から出てきた。
「さっさと謎解きに行くわよ……と、言いたいところだけど、壱達も顔を洗いに行くぐらいは許可するわ」
ゴールド=ゴールの姿の話を振らないところを見ると、カイト達の会話は二人の耳に届いてなかったようだ。もしくは、浴室のくだりだけが聞こえたのか。
「ありがとうございます。すぐに終わらせますので」
先に零が浴室に入るのだが、その時も会話の中身も二人が尋ねてくる事はなかった。
この先の行動についての確認。各自の部屋を覗いた後、ピアノ室、書斎の順番だ。
長い時間、食堂にいた事で自室に変化はないか。慌てていた事もあり、メアリ達は鍵をかけてなかったらしい。
カイトと七の自室も確認。この二つには鍵がされているが、キス達が眠らされた事とは逆の可能性もある。
それに加え、七が一度は部屋に戻った事も考えられるのだが、問題がもう一つ。
七が所持していた鍵。七の部屋もそうだが、ピアノ室の鍵が手元から消えた事になる。
零が外に出た時に預けていた鍵は、返しているから問題ないのだが、この二つは魔法で開けるしかない。
その役目はキス。七が消えたのだから、主が解錠するしかない。
だが、そこに二つ使えば、入口の結界を継続させるための魔法で、一日の魔法分を使い果たす事に。
放棄するなら、七が使用するはずだった客室。鍵の確認だけをするのかを悩むところではある。
「終わりました」
零が従者用の浴室から出てくる。顔を洗っただけなので、そこまで時間は掛からない。
「すぐに戻ってきます」
次にカイトが浴室、シャワー室へ。
中に入ると、防音になっているのか、外側にいるメアリ達の声は聞こえない。
外側からも内側でのメアリとキスの会話は届いていなかった。
『……先程の話、君はどう思った?』
死神はカイトが一人になった事で声を掛けた。死神との会話時は時間が止まるわけだが、会話次第では彼の表情が変化する事を考慮しての事だろう。
「先程というのは……メアリ様とキス様の会話ではなく、零との会話ですか?』
メアリとキスの会話に気にすべき事はなかった。
あるとすれば、零との会話。それもメアリ達が浴室から出てくる直前の話だと考えられる。
『館の主であるゴールド=ゴールの姿について。君は零の言葉に納得していたような感じがしたが』
「そうですね。僕のイメージ通りだったので」
カイトはそれを肯定する。零の言葉に違和感がなかったと。