生い立ち
「アンタ達はどうなの? 壱……アンタに関しては、それでもおかしくはないと思ってるんだけど。メアリから奪うつもりもないし、何もするつもりはないわ。それ次第では、新しく従者を取る際、優先するべき事項にするだけ」
キスの目からして、カイトは優秀な従者に見えたのだろう。それが魔法使いと従者の間の子供であれば、納得するというところだ。
実際は、死神が手助けをしているに過ぎないのだが。
零に関しては、ゴールド=ゴールが最後に選んだ従者であるからだろう。彼女を選んだのは予知とされているが、同じ境遇の者を選んだのかもしれない。
従者としての能力はカイトよりも、零の方が上な面もある。従者歴はカイトの方が上にも関わらずだ。
だからといって、キスが零を引き取ると、言葉を出さない。零からしても、疑われた相手に仕えるのは嫌だろう。
従者の立場を継続したいのであれば、三同様にそうも言ってられないのだろうが。
「僕は……知りません。捨てられてたらしく、親の顔も知りません」
「私はそうらしいですけど、そんな特別な事は出来ませんよ」
カイトは自身の事をよく知らず、メアリに引き取られた。彼がメアリを大事にするのも、当然だろう。
話を聞く限り、その可能性は高い。短命なのは呪いのせいだが、親を知らずに捨てられるあたりがそうだ。従者同士の子供だとすれば、ある程度はその親が育てるのかもしれない。
零はそうらしい。『らしい』というのは、ゴールド=ゴールに言われたのか。
何処かに特化した力はなく、魔法も使えない。彼女がそれを隠す理由もないだろう。
魔法が使えるのであれば、従者をする必要はない。侵入者に襲われた際も、魔法で対抗すれば良かったはず。
「私も壱がそれだからと、選んだわけじゃありません。私に似た感じがしたからです」
メアリもカイトを引き取るまでの生い立ちを知らないようだ。
ゴールド=ゴールは零がそれと知って雇ったのであれば、メアリが呼ばれたのも、そういう理由があるのか。
「そうなの? 少し話が脱線したわね。続きを聞くわ。ゴールド=ゴールについての話を。同じ境遇なのは分かったわ。他にも話したんでしょ」
キスは自分が話し過ぎた事に気付き、メアリと零に会話を渡し、お茶に口をつける。
寝起きという事もあり、体のダルさがまだ抜けてないのだろう。背中を椅子に傾けた。
「分かりました。私の素性に関しては話しましたし、この先は零が話してください。主や先輩従者からの話を直接聞いたのは彼女なんですから」
この先を話すのは零だと、メアリは彼女に話の主導権を与えた。