幕間 ー11ー
「今は謎解きよりも七に関する事を考えるべきだな」
七は花瓶にカイトを閉じ込めるように仕向けた。それは間違いではないだろう。その理由は助けるためか、罠に嵌めたのかのどちらなのかは分からない状況になってはいるのだが。
「キスと七の命約が切れた以上、彼に何かあったと取るべきではある」
カイトが花瓶から脱出した時には、七の姿はなかった。メアリは何もされておらず、大時計にあった紙束だけが消えただけ。
七がカイトを罠に嵌めたとすれば、紙束を見つけた事を伝える必要はない。魔導具の説明は書いてあったが、その前に調べる物は決めていたからだ。
カイトを助けるために花瓶に挿された花。あれが七だった場合、彼が裏切っていない方に傾く。
「一時は七を疑っていたが、零の言葉で変わった」
零が館の主が七消失に関係してる可能性を示唆した。七は単独行動時が多く、余計な物を見てしまった可能性がある。
逆を言えば、キスを裏切るように誘惑した可能性もある。これを死神はカイトに伝えていない。
「キスとメアリは七が殺されたと思ってるようだが、本当にそうなのか」
キスとメアリは七の死体を捜す事はしなかった。十や三の死体が消失した前例はあるが、彼の死体は一度も見ていないのだ。
命約が切れただけでは、彼が殺されたのかを判断するのは早すぎる。
「カイトのように魔導具に閉じ込められた可能性はあるはず」
カイトとアルカイズが閉じ込められた花瓶でなくとも、同じ効果のある魔導具があったのなら、どうだろうか。
花瓶の魔導具は魔力を吸収する。命約の効果は無くしている。
アルカイズの状態が、三に反映されなかった事が証拠だ。
だが、その場合は命約が切れた事になるのか。
カイトもメアリの従者となった当初は命約を結んでいた。呪いの身代わりになり、解除した形だ。
アインズはカイトに命約が切れた事は、魔法使いだけでなく、従者も感じ取れるかを尋ねた。
その答えはイエス。カイトも命約が切れた事は肌で感じたらしい。
勿論、花瓶の中が異空間であり、距離による命約の効果を無くす事も考えられる。それは効果が消えるだけで、命約自体は無くならないようだ。
だとすれば、アルカイズと三の場合はどうだったのか。
アルカイズが花瓶に閉じ込められ、命約の効果だけでなく、それ自体が切れてしまった事はなかったのか。
三はアルカイズとの命約がすでに切れている事を黙りながら、カイト達と行動していたとすれば。
七は魔導具に捕らわれているだけで、生存の可能性はあるのではないか。
魔導具の説明が書かれた紙束があれば、キスやメアリが解読出来たかもしれないが。
「絵の魔導具も調べてみるべきだろうな。生死問わず、彼を見つける事が事件を解決するためにも重要な気がする」
アインズの直感がそう告げている。簡単に館の主が七を消したわけではない。
ツヴァイが関係しているのなら、楽な推理をさせるわけがない。そんな信頼感があるのだ。