得意な魔法
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『少しは楽になったか……というのは野暮な事だな。代わりに主であるメアリが身代わりになるのだから』
零の継承権の説明が終わり、カイトとメアリは用意された部屋に戻った。
今後の話もあるが、第一にカイトの体調を回復。魔法回数を持ち越せない以上、メアリはカイトの魔力を早急に吸い上げる必要がある。
更に時間を掛けすぎると、カイトが従者の部屋に行くのが遅れて、ディアナ達に警戒の目を向けられる可能性が生まれてくるのだ。
「……全部じゃなくて良かったです。明日の集合出来なかったら危険であると、メアリ様も分かっていらしたから」
今はメアリの部屋を出て、従者の部屋に向かっている最中。死神との会話は時間が止まっている事もあり、そこまで遅れてはしないだろう。
『魔法を継承出来るのは一人だが、ディアナ達と直接争わないでいい事に安堵していたな』
継承権争いはあるが、魔法使い同士の直接対決は禁じられてる。館にある謎解き優先になったのは、メアリだけでなく、キスでさえ安心しているのかもしれない。
『それでも警戒を促すのも本来は主の台詞と思うのだがな。それにかこつけてディアナ達の事を聞き出したのは上手かったがな』
最終的に魔法を継承出来るのは一人。死に繋がる行為は禁止されていても、捕縛や監禁、手足を奪う等はしてくる可能性はある。
最悪、従者同士の戦闘も禁じられている事から、そこで試してもおかしくはない。
それをするのは館の主を見つけた直後。継承権を失った場合かもしれないが。
『最後に全員が争ったのではない事は言っておくぞ』
死神はカイトの思い浮かんだシナリオを否定した。その場合、誰かが生き残るはずであり、死体が消えてるのもおかしい。同士討ちになったしても、回復魔法があれば問題ないはず。
更に言えば、死神は彼女達の記憶に触れており、それを元に擬似的世界を構成している。
死神はカイトの視点を使い、この世界を楽しんでいるが、ある程度の内容を入っていてもおかしくない。
そんな内容であれば、カイトは死神探偵事務所に来れてはいないのかもしれない。
『メアリから教えて貰った情報は概ねに間違ってないな。従者に関して、あの視線の理由がアレである可能性があるか』
メアリがカイトの魔力を吸収するには時間を有し、その間にカイトはディアナ達の事を教えて貰った。どんな情報が有益になるかは分からないからだ。
その中に従者の部屋前で感じた視線の原因がコレだと疑う物があった。
まずはキス=ラブ。魔法使いのランクとしてはメアリと同じ。主に攻撃的な魔法を得意としている。
次にアルカイズ=ソード。魔法使いの位としてはキスやメアリよりも格上。得意とするのが探知系の魔法。館の主を一番に見つける可能性が高い。
最後はディアナ=マーベル。彼女は魔法使いの位としてはアルカイズと同格。変身魔法の使い手であり、人間や動物、物にも変身可能。メアリ達が見た姿が本来の姿なのかは不明。
ディアナとアルカイズの二人は不老不死の研究をしているという噂があるらしく、それに少しでも近付くためにも、回復魔法は必須になると考えてもおかしくはない。