四日目
「壱!! 無事だったのですね。……本当に良かった。貴方もいなくなったら」
カイトがメアリの部屋に行くため、死角となる角から階段の方へ姿を見せると、メアリとキスがその場にいた。彼女二人だけでなく、休んでいたはずの零も一緒のようだ。
メアリはカイトの姿を見て、彼の元へと駆け寄ってくる。
カイトが姿を消して、何時間経過しているのか分からない。入口の結界が消えていない様子から、一日は経過していないだろう。
魔法使い、従者それぞれが自由な時間のはずが、外に出ているのはどういう事なのか。
メアリと零は体を休めていたはず。キスも安易に部屋から出るとは思えない。
『……どうやら半日……四日目に入っているようだ。大時計が三時を指している』
カイトの視線はメアリに向けられているのだが、キスや零の姿を確認した際、大時計も視界内に入り、死神がそれを捉えた。
大時計の針が三時を指しているのは、昼の十五時というのはあり得ない。カイトと七が魔導具を調べ始めた時には、その時間を過ぎていたからだ。
カイトだけでなく、死神もそんなに時間が経過しているとは思っていなかった。花瓶の中と外では時間の流れが違っていたらしい。
「アンタは今まで何処に消えてわけ? それに……七は一体どうなったのかを教えなさい。一緒に行動していた事は、メアリから聞いたわ。コイツも知らないみたいだし」
「七が消えたんですか!? てっきり……」
カイトは七がメアリを襲うつもりでいると考えていた。だが、実際に起きたのは、七自身の姿が消えたらしい。メアリが言った『貴方も』というのは、そういう事なのだろう。
「てっきり? 何か知ってるわけね。……七と命約が切れたのよ」
キスが苛立っているのは、七の姿が消えただけでなく、命約が切れている事に他ならない。そうでなければ、こんな時間だ。ゆっくり眠りについているはず。
「私とメアリは協力関係にある。アンタがやったわけじゃないわよね」
入口に結界が張られている以上、侵入者が館内に入るのは難しい。とはいえ、別の方法があれば分からない。
だが、七に何か出来た人物がいるとすれば、一番にカイトが候補に上がってしまう。
「違います。従者同士の争いは禁止されてます。メアリ様に罰が向けられるような事はしません」
「……そうよね。アンタ達に関してはそうだわ」
カイトのその言葉で苛つきが少し収まり、キスは納得する。これまでのメアリ達の行動を見れば、納得するところなのだろう。
「それでは……一体何があったのかを話してください」
メアリも落ち着き、カイトに今までの経緯を説明するように指示してきた。
「メアリ様。立ち話をするよりも、食堂で話をしてはいかがでしょうか? 彼も何かあったはずです。お茶も用意します」
立ち話よりも食堂で座り、ゆっくり話す事を零は提案してきた。




