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脱出

「……やってみます。今はこれしか方法がありません。それに時間が経過するたび、無理になるはずです」


 時間が経過すれば、花は魔力を吸われていく。外でカイトが触れた時のように崩れてしまう程に。そうなる前に登りきる必要がある。

 

 カイトは花瓶の茎を触れてみる。粘着糸から出ている液が滑り止めとなっており、掴む事は出来るようだ。


「……よし!!」


 鍵と人形を忘れず燕尾服のポケットに入れ、花に全体重を乗せる。体が小さくなっているとはいえ、重みで千切れてしまってもおかしくはない。


『大丈夫そうか。花は魔力吸収のためだけかと思ったが、脱出するためにも使えるとはな。君の前に七も一度入っていたかもしれないな』


 花瓶に花が挿されていたのは、カイトを閉じ込めるために魔力を補充させる。


 それもあるが、七もこの中に入り、鍵や人形を置いた。その際、脱出用に花を使った可能性もある。時間的に厳しいかもしれないが、何処かで試した事があれば別だろう。


『逆にいえば、アルカイズの場合は花がなかった事で脱出出来なかったわけだな』


 アルカイズの死体の側には割れた花瓶だけで、花はなかった。


 彼も脱出のために色々試しただろうが、そのせいで粘着糸に捕まったのだろう。


 とはいえ、カイトの場合は呪いによる魔力だけであり、花瓶もそこまで執着しないだろうが、魔法使いであるアルカイズであれば、そうもいかなかったかもしれない。花よりもアルカイズを選ぶのではないか。


「この調子で行けば……」


 今のところ、カイトが上に行く事に対しての障害はない。花の隙間から誰かが覗き込む事もなし。万一、覗いたとしても、相手の目にカイトの姿が見えるかは別だ。


 彼が花瓶を覗いた時には暗闇で、底を見る事が出来なかった。


「これで……花瓶から脱出だ!! ……っ」


 カイトの体が全て花瓶の外に出る。上半身だけでは元に戻らず、花びらの部分まで登りきった。


 すると、花瓶に吸い込まれた時とは違い、カイトの意識が一瞬だけ飛んだ。


 それは元の体に戻るための反動なのかもしれない。


 彼の体は無事に元の大きさに戻り、投げ出させる形で床に落ちた。その音が軽く響き渡る。


 花瓶もその振動で下へ落下したが、割れてはいない。この魔導具に関しては紙束と一緒にキスやメアリの二人に渡した方がいいだろう。


『無事に元の姿に戻れたな。今から七を探すのか。それとも』


「メアリ様の無事を確認します」


 当然、カイトは七を見つけるよりも先に、メアリの安否確認を優先。


 七がメアリを狙うのであれば、先にカイトを確実に仕留めるべきではあった。


 キスはメアリとカイトが命約を結んでいない事を知っているが、彼はそれを知らないはず。メアリがキスに告げた時、七は側におらず、聞き耳も立てられなかったはずだ。

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