鍵と人形
「その可能性が高いですね。魔力が無くなるだけで済めばいいのですが……何か起きるまでに脱出しないと」
『そうだな。花瓶という事もあって、中に水を流されたら最悪だ。アルカイズの二の舞になるかもしれない』
アルカイズの死因は溺死。彼が閉じ込められた花瓶に水が注ぎ込まれた可能性がある。
七がカイトを罠に嵌めたとして、それは何のためか。単に閉じ込めるためか。それとも殺すつもりでいるのか。
花瓶に水を注いだ事で、カイトに手を出した事になるのか。
彼が意識を失っている間に殺害する、溺死させる事も出来たはずなのだが、七はそれをしなかったのも気になるところだ。
「まずは……この花瓶の中に何があったのかを調べます。僕が持ってた斧があれば、花瓶を壊す事が出来るかもしれません」
カイトは零と武器を交換したまま、斧を所持していた。紙束を調べる時には斧を床に置いていた。
花瓶の中を覗いた時はどうだったのか。彼は片手で調べたのではなく、両手を使っていた。
つまり、カイト以外に近くの物を吸い込んでいれば、僅かな可能性があるくらいだ。
『……ないな。あちらにあったとして、その斧が君が消えた場所を教える手掛かりになれば良いが、片付けられている可能性が高いだろうな。花瓶が戻されている事でも分かる』
カイトが花瓶を覗いていた時に落ち、割れずにいたとしても、横向きになっていてもおかしくはなかった。
それが縦の状態になっているのは、誰かが元に戻したからだ。それを考えると、側に置いてある斧も回収されているはず。カイトがその場で消えた痕跡を残すわけもないのだ。
『だが……アルカイズが花瓶を調べたのは同じ理由か』
「花瓶の中から聴こえた音は鍵だったみたいですね。残った部屋の鍵なんでしょうか」
花瓶の中に鍵があり、花瓶を動かした事で音を鳴らしていたようだ。
アルカイズも何かが隠されていると、花瓶を調べるのに至ったのだろう。
とはいえ、この花瓶から脱出するための鍵ではない。
『実際、メアリ達が調べられてない部屋もある。ここにあるのなら、見つけるのは厳しいだろうな』
見つけたとしても、花瓶の中に閉じ込められる。協力関係がなければ、魔導具からの脱出は厳しい。実際に起きた事では、それはなかったように思える。
カイトがいなければ、ディアナ達各自で動いたはずだ。
「これは……どういう事でしょうか?」
花瓶の中にあったのは鍵だけではなかった。人形も置いてあった。それが誰の人形だったのが問題となるのだが……




