魔導具の中
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「う……ん……ここは? 確か……魔導具を調べる事になって、花瓶を覗いていたところで」
カイトは目を覚まして、周囲を確認してみる。周囲は円のように丸く、壁に覆われている。
暗闇でないのは、上から僅かな明かりがあるからだ。それがなければ何も見えなかったかもしれない。
そして、その高さも驚くところだ。手を伸ばしても届くはずもなく、壁の幅も上にある部分から狭くなっている。この館以上の高さはゆうにある。
上に行くための階段、梯子はなく、手で掴む場所もない。
『意識を取り戻したようだな。君は吸い込まれたんだよ。今いるのは花瓶の中だ。上が狭くなっているのもその形所以だ』
「吸い込まれ……そうでした!! だとしたら、アルカイズ様も花瓶の中に」
カイトもアルカイズが自身同様、花瓶の中にいたと思い至ったようだ。
『その可能性はあるな。だが、今はそれを考えているところではないぞ。ここから脱出する方法を優先するべきだ。上に行く手段がない事は分かっただろ』
アルカイズが花瓶の中にいたとして、そこにずっと隠れていたとは考えにくい。
彼を以てしても脱出出来なかったのではないか。いや、時間が無かったのか。
この花瓶の中には水はなく、それだけが救いかもしれない。アルカイズのように、カイトも溺死していたかもしれない。
「それだったら、七がメアリ様に助けを求めてくれるのではないでしょうか? 彼は僕が目の前で消えたのを見ています。流石にこの状況では黙ってられないはずですよ」
カイトと七はメアリに共に行動をすると伝えているが、魔導具を調べるとまでは言っていない。
それを言わないのが七と行動する条件だったからだ。
だが、カイトが魔導具の中に閉じ込められたのであれば、七はメアリに伝えるしかない。でなければ、キスとの協力関係も解消される可能性もある。
『残念だが、その可能性は低い。君が意識を回復するまでに時間が経過している。数分の事ではないはずだ。七はメアリに報告していないだろう』
「そんな……七が僕を罠に嵌めたんですか? それはルールに違反するはずで……流石にそれは」
カイトと死神との接続が切れた。それは短い時間ではない事を意味しているようだ。
そして、七がカイトを罠に嵌めたかどうか。ルール上、それは禁止されている。それをすれば、主の継承権が無くなるだけでなく、自身の身も危なくなる。彼もそれを知らないはずはない。
『どの地点で罠に嵌めたとするかだ。花瓶を調べると決めたのは七ではなく、君だ。彼が絵を選んだ時、調べる物は限られている。そう仕向ける事も可能だが、そこで判断出来るはずもない』




