同一効果
「まずは……アルカイズ様が殺された場所にあった花瓶の事を覚えていますか?」
カイトは死神に尋ねる。絵画室でアルカイズの死体の側にあった割られた花瓶の事だ。
それは廊下にあったはずの物だと考えられる。
『ああ。魔導具の絵の中に似た物があったな』
カイトは紙を捲っていき、それらしき物で手を止めた。彼もおおよその見当は付いていたようだ。
「……これですよね」
「そうだな。流石に色までは判断が付かないが、私もそれだと思う」
絵には色が塗られておらず、何色の花瓶なのかは分からない。殆どが白色になっているのだが、一部黒に塗り潰されているのもある。
割れた花瓶の色は白。カイトと死神は形で記憶しており、紙にはその花瓶だけでなく、もう一つの花瓶が描かれている。
それも同じ形の花瓶ではなく、別の姿をしているのだ。
同じ花瓶であり、その色が違う事で効果の変化があるのであれば、一緒の紙に書くのは分かる。
別の花瓶が一枚の絵に描かれていた場合はどうなのか。比較対象、もしくは同じ効果のある魔導具だと思えてしまう。
『同じ花瓶がない事を考えて、もう一つを見つけておくべきだな』
「……他にある壺や花瓶よりも先にですか?」
壺や花瓶の魔導具は他に三枚ある。紙に描いてある絵と照らし合わせながら見ていくのにも時間は必要だろう。
階段近くにある壺や、食堂にある花瓶、色々とあり、一つずつ調べていくべきではないのか。
『その方がいい。下手に時間をかければ、回収させる可能性がある』
入口に張られた結界に変化はなし。侵入者が何かした様子はない。だが、魔導具の情報が載った紙束があちらの元に渡るとも限らない。
あの花瓶と同じ効果がある物があると知れば、処分する事も考えられる。
キス達の手元に行くのは、明日以降になるのだから。
「わ、分かりました。ですが、七との距離もあるので。この周囲に無ければ駄目なので」
カイトと七は互いに見える範囲内での行動をふる事になっている。七が食堂内にいる以上、奥の方に行くは出来ない。
当然、倉庫や浴室、トイレ等に入る事も無理となる。
階段を降りた辺りで、絵の中にある花瓶は無さそうだ。
『そうだったな。そうなると絵に描かれた花も気にしておくべきか。何かしらの意味はあるはずだが』
花が差された花瓶、壺がない。いつの間にか全部が外されている。
二階にあった花瓶もそうだ。アルカイズの側にあったのは割れた花瓶だけで、花は添えられてなかった。
『この花は館付近で見かけたぞ。それ以外でも……』
カイトと零が外に出た時、死神はその花を一度は目にしたようだ。




