起動方法
「ま、待ってください。調べている間、壺や花瓶の魔導具の紙だけでいいので、持たせてくれませんか? その後、ちゃんと元へ戻しますので」
七は食堂に行く前にカイトから紙束を奪い、大時計に戻そうとする。後から、キス達に教えるためでもある。
死神の記憶力もあるが、彼自身が実物と紙の絵を確認したい気持ちがあるのだろう。
「……その方が都合が良いか。調べ終わったら、声を掛けろ。返すところは見せて貰うぞ」
七はカイトに数枚の魔導具の紙を渡し、元の場所に戻した。彼は絵に関する魔導具の紙は持っていない。
都合が良いというのは、確認しながら調べる事ではないのか。絵に関する情報は然程書いておらず、必要がないとも取れるが。
「あ、ありがとうございます!! 元に戻す時は声を掛けますので。七も何かあれば教えて欲しいです。僕も確認します。そうするんですよね?」
調べる魔導具は分担するが、気になる物に対して、声を掛ける。カイトであれば、七に壺や花瓶を確認して貰う形だ。
「そうだ。だからといって、何度も呼ぶなよ。まとめてからにしろ」
「分かりました。何度も呼ぶのは、調査を中断する事になるからですね」
七はカイトの答えに頷き、食堂の中へ。調理場に向かう事はなく、牡丹の絵の側へ。
食堂の謎解きで絵に触れたのは十。あの時には何もなかったわけだが、七は警戒なしに調べ始める。
『いつ見られるかも分からない状態だ。今は調べる事に徹するだろう。こちらも行動に移すぞ。一瞬だが、七がこっちは見たからな』
七がカイトの方を向いたのは視線を感じたからか。それとも彼が動いたのを確認するためなのか。
カイトは壺と花瓶の魔導具について書かれている紙をもう一度見る事にした。それも行動の内に入り、七も口出しはしてこないはずだ。
『魔導具を使うためには魔力が必要であり、起動するためのスイッチもあるのだろ? 下手に触れては駄目なのも、それが理由のはずだ』
魔導具を使うのには魔力が必要であり、それを起動させる方法を知るのも重要だ。
調理場や焼却炉には分かりやすいスイッチがある。それの絵もちゃんと描かれていた。
ただ、壺や花瓶、絵、ナイフ等にスイッチらしき物はなかった。それを必要としないのか。もしくは口に出す呪文が起動する方法なのか。
花瓶には花の絵もあったが、流石にそれがスイッチになるとは考えにくい。
「そうですね。分かりやすい物だといいのですが……今調べるのは魔力がない分、少しは安心出来ますが」
だからこそ、カイトや七がキスやメアリなしで魔導具を触り、調べる事を可能としたわけだ。




