説明書
「こっちの大時計は零が使った薬等があるだけで、それ以外は怪しい物は無さそうです。知識がなければ、これらも危険かもしれませんが……そちらはどうですか?」
調合室には毒もあった事から、下手に使うわけにもいかない。彼女だからこそ、どれが使用出来るのかを把握しているのだろう。
「そちらの薬があった場所に紙束があった。読めないのが数多くあるが……魔導具の種類だと思う。それと……謎解きのヒントだ」
七は時計を調べ終え、カイトに近付く。その手にあるのは、大時計に隠してあった紙束なのだろう。
「見てみろ。その後は元の場所に戻す。勿論、キス様達にも伝えるぞ」
七は紙束をカイトに手渡すが、最後は元の場所に戻す事に。
彼は読めない文字があると言っていたが、悪魔学や神学ではなく、魔導具関連であるのなら、メアリ達も解読は出来るのではないだろうか。
「これは……十と一の読み方……というか、使い方ですか」
紙束の一番上には謎解きのヒント。死神が考察した事が書かれていた。十の文字では上に『じゅう』、下に『プラス』と。一は『いち』と『マイナス』だ。
数字と記号とで別々に使う事を教えている。こんな場所に隠されているのは意外ではある。
このヒント以外が魔導具についてとなると、その紙束は書斎にあってもおかしくないようのではないか。
それが大時計に隠されているのは謎解きを難しくするためだとも考えられる。
「従者の部屋で白と黒が示したのが一と十だ。衣装室では数字として使ったのだろ? だとすれば、書斎では計算に使うのではないだろうか? 本棚の端にあった=もそういう事だろう」
「……ですね。僕もそう思います。キス様にとって貴重な情報」
「これはメアリ様にとってだ。書斎の謎解きのヒントに過ぎない」
この情報は書斎の謎解きに使う物であって、必要としているのはキスというよりも、メアリ。
彼が欲しいのはキスが得となる情報だ。魔導具の情報が書かれた紙束も十分な成果のはず。
カイトはヒントの紙を捲り、魔導具の紙束へとペラペラと捲っていく。
そこには手書きの文字と一緒に、魔導具の絵が描かれている。その文字と絵は館の主が書いたのか。
そうだとすれば、他にも日記等が隠されているのかもしれない。
『……精細に描き込まれてはいないな。アレだと分かる物と似たような物、判別が難しいか』
魔導具の絵には調理場にある魔導具があれば、焼却炉全体が描かれている物もある。
更に花瓶、壺、鏡等に関しては複数枚ある。それぞれ別の効果があり、それが文字に書かれているのだろう。




