制限
「ちっ……本当に使えないじゃないの。理由をちゃんと伝えて欲しかったんだけどさ」
零の説明は続いているのだが、キスが思わず呟いてしまったようだ。
試しに魔法を使うつもりが、失敗。発動しなかったようだ。それはすでに魔法を三回使用した事を意味している。
彼女もそれが分かっていて、試したのだろう。だが、それに罰則があるとは考えなかったのか。
何も起きなかった事が不幸中の幸いだ。
それを見たディアナとアルカイズも魔法を発動するための詠唱を口遊むが、何も反応なし。
二人もすでに魔法を三回使用していた。試したのも、キスに何も反動がなかったのもそうだが、偽装してないかを確かめるのもある。
「申し訳ありません。ですが、これで分かって頂けたはずです。魔法の回数に制限がある事を。それに魔法回数の繰り越しもありません。使いどころに注意してください」
魔法の制限。館の謎を攻略する際に魔法は必要だと考えられる。その数は分からないが、魔法使い同士の協力、もとい利用するのは必須になるだろう。
「……これで説明は終わりで構いませんか?」
ディアナは零に説明が終わった事を確認する。
「はい。今から開始するのも構いませんが、すでに魔法を使用されたようで。足並みを揃えるのであれば、明日から開始にしても大丈夫です」
「つまり……魔法を必須であり、謎を解くのには危険が伴うわけだ」
アルカイズの質問に零は答えない。何も言わない事が肯定してるとも取れる。
「明日からで良いんじゃないの? 全員、従者を本当に休ませてはいないわけだから。魔法使い同士の戦闘も御法度。従者も無理なんだから、安全に回復出来るわけだし」
キスは従者を慮っての発言ではなく、ディアナやアルカイズに対しての牽制。お互いが魔法を使えない状態で、謎に挑戦するのは危険。
魔法使いは慎重であり、無謀な行動は取らない。従者が一人しかいないのであれば、尚更だろう。
「私もそれで構わない。どの時点で魔法が補充されるかも分からないからな。開始の時間と場所を決めた方が公平になるだろう」
「そうですね。私も無駄に危険な目に遭遇したくありませんから。早朝六時ぐらいで構わないのでは?」
キスの意見にディアナとアルカイズは賛成。やはり、危険を冒してまで、相手よりも先に進むつもりはないようだ。
「メアリも同じ考えですよね。? 加えて、先程は従者を休ませる事が出来なかったのでしょ」
メアリはキス達のように魔法の回数を試すような事はしなかったが、ディアナ達は自身のようにすでに三回魔法を使用したと思ってるようだ。
しかし、メアリは魔法を三回使用していない。この時点で三人よりも一歩先に行く事が可能なのかもしれないのだが……
現実に起きた事とは違う展開になるかもしれないが、結末に変化が起きる事はない。
メアリが先に一人で進むよりも、ディアナ達と同時に謎解きをした方が安全なまである。