二つの大時計
「七が絵を確認するのなら、僕は花瓶、壺を見ていきます」
「アルカイズ様の側にあった、割れた花瓶だな。あれがアルカイズ様の死に関係しているのなら、調べる事に損はないだろう」
七はキス達と共に絵画室には入らなかったが、アルカイズの死体をディアナの部屋に運ぶ際、その惨状を目にしている。
割れた花瓶がアルカイズの死に関係しているのであれば、調べる事に損はないと、七も同意している。
魔法使いの侵入者がアルカイズを殺したのではなく、従者が手にかけた可能性がある。その方法を知るのも重要だ。
「はい。魔導具といっても、魔力が補充されてないかと思います。物に触れていくんですよね」
魔導具に魔力を補充しているのは、生活するために必要な物。調理場や浴室やトイレ。館の明かり等。
甲冑や外に置いてある像。結界もそうだが、守りに魔力を使ってない。下手に魔力を使用しないという事だ。
「そうだ。絵画室の扉のような変化があれば、そこに何かあると、分かりやすくて助かるのだが」
絵画室の扉に気付いたのも、絵に変化があったからだ。
「まずは入口付近だ。左右の大時計をどちらか一つずつ調べるぞ」
カイトと七が最初に調べるのは入口付近。食堂、浴室、トイレ、従者の部屋、倉庫等、全体が見渡せる場所だ。
そこで一番に目に入るのはゴールド=ゴールの絵だが、左右の大時計も目立つ内に入る。
零はその一つから薬を取り出していた。物入れの機能も有しているのが分かるが、それ以外に何かあるのか。
七は絵や壺等よりも先に調べるようで、彼女とは逆の大時計を見始めた。
必然的にカイトが見るのは薬があった側の大時計を調べる事に。
『時計が示す針は同じだな。振り子も機能としていた。その奥に隠されているのが薬だったな』
死神が言っているのは七が調べている大時計の方だ。カイト側と遜色なく、時計の針が別になっているわけでもない。振り子の速さも同じだ。
彼女は何度も視界に入る事で記憶している。下手に違う動きをしていれば、すぐに分かるだろう。
カイトと死神が目にしてないのは振り子の奥部分なのだが、零はそこから薬を取り出していているのは見ている。
それ以外の物はないだろう。確認のために調べてみるが、小さな棚があるのが見えるだけ。そこに薬が隠されていたのだろう。
『何かあるとすれば、七が見ている大時計の方だな。零も一つの時計に薬が置いてあると言っていた。もう片方には何があるかだ。勿論、魔力次第で、この時計も変化するかもしれないのだろ?』
零が大時計から薬を取る際に、片方の時計にだけあると告げていた。
振り子の奥となると、見つけにくい場所であり、そこを教えるのが謎解きの報酬だった可能性もある。
だが、彼女は治療を優先したとも考えられるのではないか。




