罰
「七が侵入者の共犯だった場合、自身も死ぬ事になるんです。彼の行動は矛盾してませんか?」
『だが、彼の人形は何もされない状態になった』
焼却炉にあった彼の人形は無事であり、七も焼死を免れた。とはいえ、命約がある以上は危険が付き纏う。
だからこそ、彼は石橋を叩いて渡るような事をしているのではないか。
「何かしようにも、彼は僕に何も出来ませんよ。従者同士の争いは禁止されてます。罠を掛ける行為も同様なはずです。魔法使いをよく思ってなかったのは、三も同じですからね」
七はカイトに手を出せない。従者同士の争いは禁止されている。それを破れば、罰が与えられ、共倒れになるだけだ。
『私もそう考えていたが、腑に落ちない事がある。従者同士の争いは禁止されているが、罰を受けるのは主となっていたはずだ』
魔法使い同士が争った場合、継承権が剥奪される。候補者で無くなってしまうのだ。それは従者同士の争いも同様なのだが、それ以外に罰が降される事も、零はカイト達に伝えていた。
「ですが、その場合は命約によって、従者が受ける事になるのではないですか?」
『問題はそこなんだ。それをどう捉えるか。命約があるのだから、罰に関しては主と言わなくても良かったはず。それを言葉にしたのは、命約が意味を持たないのではないのか。勿論、一番は継承権を無くす事なんだが』
七がルールを違反した場合、命約を通り抜けて、キスに直接罰が与えられる。
それが死に繋がるものであれば、彼が生き残る可能性は出てくる。それを狙うのなら、共犯者説が生まれてはくる。
「確かに言われてみれば……それでもデメリットの方が多いです。一発逆転を狙うようなものですよ」
『それは否定しない。失敗した場合、彼の身が二重に危ないのは確かだからな』
死神が言う二重の意味は何か。一つは命約の効果が消えてなかった場合、彼の身に罰が来る事。
「零は罰と言ったましたけど、死ぬとまでは言ってませんでした。もし、罰でキス様が死ななければ、七に待つのは悲惨な結末です。従者を辞めさせられるだけで済むかどうか」
継承権争いに来た以上、少なからず、危険な目に合う覚悟はあるだろう。それが従者のミスだったとしてもだ。
ただし、それで終わればだ。継承権剥奪がキスに振り掛かる。従者がそれを知りながら、実行に移すのを許すはずがない。殺されても仕方がない行為。それだけの魔法なのだ。
「従者だからこその生活があるんです。それを簡単に手放すのは……」
それに関しては三も言っていた事だ。主に嫌悪感を持っていたが、それ以前の生活に比べてはと。衣食住が約束されているのだから。
余程の事がなければ、主を裏切るのは難しい。




