魔法使いの性
「そうよ。メアリが体を休ませている間、魔法学や悪魔学の本を調べるつもり。神の数字は本に載ってたわけでしょ。時間潰しをするだけで、謎解きをするわけじゃないから。勿論、メアリが許可すればだけど」
書斎の謎解きは神の数字と悪魔の数字を導く事だとメアリ達は考えている。
その二つの数字を入れる本棚も用意されているからだ。
「それは構いませんが……字が読めずにいましたよね。線を探すのですか?」
神の数字を見つけたのは七。前主が所持していた本に書かれており、それが書斎にもあったからだ。
しかも、律儀に数字のページが分かるよう、線も引かれていた。
悪魔の数字を探す際、それがあるのを見つけるのも一つの手ではある。
「少しずつでも解読していくわよ。魔法学は自分のためだから」
キスは謎解きではないと言葉にしている。メインは解読だが、彼女自身が新たな魔法を習得するため。線に関しては、あれば運が良かったぐらいにしか思ってないようだ。
「……分かりました。私も部屋に持っていっても……休む事を優先しますので」
これは魔法使いの性だろう。魔物の体毛の時と同じだ。知識を取り込みたい。メアリに関しては回復魔法でなくとも、解呪方法が悪魔学に書き記されているかを確認しておきたいはずだ。
「私自身がする以上、口出しは出来ないかもしれないけど、そのせいで体力を回復出来なければ、話にならないから」
キスはメアリだけでなく、カイトにも視線を向ける。お目付け役として、見ておけという事だ。
「書斎で何冊かの本を取って、私達が部屋に戻った時から明日の朝……九時までは自由時間。先に起きた方が部屋にノックする事。その時、魔法使いと従者の二人の声を聞かせるようにする。それでいいわね」
今からだと半日以上が自由となる。メアリだけでなく、零にもそれだけの時間は必要だろう。
魔法使いと従者の両方の声を必要とするのも、侵入者対策。結界が張られても、そこは気にしておくべきところではある。
ディアナは侵入者を部屋に招き入れ、殺されてしまったからだろう。警戒はするべきだ。
「それと……アンタは一度シャワーを浴びなさい。服も着替えなさい」
焼却炉に入ったせいで、カイトの体は少し臭いがあり、服も汚くなっている。加護があっても、そこまでは守ってくれないようだ。
「そうですね。壱の着替えもちゃんと持ってきてます。まずは服を取りに行き、その後に書斎で良いでしょうか?」
「構わないわ。メアリは私達が見てるから、アンタは浴室に行くのよ」
どうやら、カイトは書斎に行く事は出来ず、浴室に行く事になったようだ。




