部屋移動
「……客室ですか? あんな事が起きてしまったのであれば、仕方ないですね。隣の客室に七や壱がいれば、予防にもなりますから」
メアリとキスの部屋に再度ガスを注入されないためにも、施錠するだけでなく、従者が待機していた方が安全ではある。
「分かりました。メアリ様もそれで構いませんか?」
零は壱と七本人に聞かないのは、彼等の意思とは関係なく、主の指示に従わなければならないからだ。
「私もその方が助かります。隣にいてくれた方が安心しますので」
メアリもそれを了承。彼女としてはカイトを自室に置く事も考えそうなものだが、そこはキスに合わせたのだろう。
「僕もそれでも良いのですが……零はどうするのですか?」
それぞれが一つの部屋を使用する事になるのだが、彼女は従者の部屋で休むつもりなのか。
カイトとしては、従者の部屋をもう一度調べる事にでもなれば、彼女がいる事がネックになるかもしれない。
「それでしたら、私は従者の部屋で休ませて貰います」
とはいえ、彼女は従者の部屋を選んだ。カイトがそれに文句を言えるはずもない。
零はそのまま従者の部屋へ入っていく。
『あの部屋を調べるのは今日でなくてもいいだろう。君も休む事になっているが、七のように探索を続ける事をメアリに言うべきだ』
カイトも侵入者に襲われる以前に、一度は倒れた身だ。死神との接続が切れたせいでもあるが、メアリがそれを知る由もない。
彼女であれば、カイトの心配をして、探索をするのを止めてくるだろう。
それでも調べる事が山積みになっているのを、一つでも片付けていかなければならない。
「メアリ様。僕も彼のように館内を調べたいのですが……勿論、休憩も取りますから」
「……分かりました。彼だけ動いてもらうわけにもいきません。出来るなら……何でもありません」
メアリとしては七と共に行動して欲しいのだろう。侵入者が館内にいなくなっても、警戒は解いてないようだ。
協力関係を結んでいるとはいえ、単独で動く方が得意な者もいる。
キスもメアリが何を言おうとしてるのか察しはするのだろうが、協力しろと言わないのは、それもあるのかもしれない。
「今から別行動……と言いたいところだけど、その前にメアリ達も一緒に来て欲しいところがあるのだけど」
「私達も……もしかして、書斎ですか?」
書斎の鍵を所持しているのはメアリ。所有者がその部屋の謎解きを優先する事に決めている。
キスが勝手に書斎の謎解きをするのは違反となる。魔法使いにとって約束は重要であり、破る事は許されない。
もし、キスが勝手に謎解きをするのであれば、ピアノ室のはずだ。




