休憩
「魔法を一回は使用したというのは……彼女ですか?」
「それもあるけど、アイツの死体も消えてるのよ。移動させた痕跡らしき物があるのは見たけど、それに魔法を使ったかもしれないわね」
メアリが言ってるのは三の殺害に関してだろう。首が見事に切られた状態だった事で、魔法が使われたと考えられる。
その時、赤の侵入者は館内に隠れていたはずであり、剣は使用されていない。剣だとしても、三が抵抗すれば、簡単に切れるものでもない。
キスは三の死体消失も魔法が関係してるとも思っているようだ。血の跡、死体を引き摺った形跡があった事は、彼女も水晶玉から見ているはず。
「彼女の死体も消えていたのですか!? 侵入者が運んだとしたら、確かにそうかもしれませんね」
メアリも同意見のようだ。彼女はカイトの持つ鈴が鳴るまでは意識を失っており、水晶玉の映像を最初から見ていない。
魔法使いなら自力でするよりも、魔法を使用を選ぶわけだ。
「それでは……私が先に」
「私がするわよ。先に気付くのは攻撃魔法が得意な私の方がいいでしょ」
メアリよりも先に、キスが魔法による結界を作る事に。先に知った方が攻撃魔法の準備が出来るのは確かだ。
「分かりました。キス様の後を追いながら、詠唱します」
キスは詠唱を開始した直後、その後を追うようにメアリも魔法を唱え始める。
『……同じ魔法を使うのだな』
二人が同じ詠唱をしている事が分かる。結界を作る魔法ともなれば、そこまでの数はなく、範囲も同じであるのだから、一緒になるのも無理はないのかもしれない。
死神がそのように言うのは懸念があるからだ。同じ魔法であるなら、一度で壊される事はないのか。魔力が違うといっても完成すれば同じ結界に過ぎないのではないか。
だが、それも完成するのを見れば、杞憂だと分かる。
詠唱の最後の言葉が違っていたのだ。魔法使いの名を付ける事により、変容する。
キスの結界の色は透き通る赤であり、メアリの結界は黒に覆われて、キスの結界が見えなくなっている。自身の色の結界だ。
『魔力もそうだが、名を付ける事で変化する結界か。面白い魔法だな』
死神も結界の魔法は興味深いようだが。
「はぁ……はぁ……この後は謎解きの続きをするのですよね? キス様が調べたピアノ室の謎解きを」
メアリは魔法を唱え終わった後、息を切らしている。体が弱った状態での魔法は辛いものがあったようだ。
「……しないわよ。今のメアリの状態だと無理ね。魔法を使い切ったわけだし。アイツも襲われた後だから、休ませたいでしょ」
キスならば謎解きの続きをするのかと思いきや、メアリとカイトを休ませるつもりのようだ。




