二重結界
「構いませんよ。魔法回数の制限や候補者同士の戦闘を禁止する。結界を張るのは駄目だとは言われてません。ディアナ様達が自室にもう一つの鍵を付けたのと同じだとでも思ってください」
零は七に矢を抜いてもらい、薬草を傷跡に貼り付け、包帯を巻いていく。
彼女は二人が結界を張る事を許可する。零自身、自分の身を守る事を選んだ。
「ただし、結界の魔力は魔法一回分にしかならないかもしれません。次の日に消えていれば、再度張り直さなければなりません。そこは注意してください」
結界は魔法一回分の魔力しか保てない。それが一日であれ、結界だけで限られた回数を減らされるのは痛手だ。一日でなく、数時間であれば無駄な行為になる。
「……いいわ。一回分であれば一日は保つでしょ。魔力の強さは決められてないわけだし。メアリもそれぐらいはしなさいよ」
魔法によって、魔力量は変わる。メアリの感視は魔力量の使用量は少ないが、一回に数えられる。
キスの攻撃魔法、鎖を出す魔法の魔力量は感視の比ではないだろう。それでも回数としては同じだ。
結界を張る魔法の魔力量を出来る限り、高める。それでも継続的効果は常に魔力を消費する事から、その場で消えるのであれば一日限界。
いや、二人は結界を一日は保たす事が出来るという事だ。
とはいえ、メアリはカイトの魔力を吸い取り、万全の状態ではない。どちらが先に魔法で結界を張るのか。
互いに今日の魔法回数は残り一回。魔法を使用すれば、謎を解くのが遅れる。どちらが使ってもそれは同じだが、館にあるであろう罠による自衛が難しくなる。
「それは勿論ですが……私とキス様、どちらが先に結界を」
「どちらかじゃない。私とメアリとで同時に結界を張るわ。結界を二重するのよ」
キスは二重結界を提案してきた。同時であれば、キスとメアリに差が生じない。
従者共に健在であり、魔法回数も両方が無くなる。
「入口の鍵、私の結界、メアリの結界を解除するために、侵入者は三回魔法を使わないと駄目になるでしょ。一つの結界が壊された時点で、攻撃された事に気付けるわ」
キスとメアリと二種類の結界になる事で、一回ずつ壊さなければならない事になる。入口の扉にある鍵も壊されておらず、それにも魔法が必要になる。
侵入者の魔法使いはこの時点で、魔法を使い果たす事になる。
結界が壊された事を、作った本人が察知出来るようになっていれば、すぐに対処可能でもある。
「気にするべきところがあるとすれば、結界の消えるタイミングだけね。そこを狙われないようにするぐらいよ」
結界は一日は保つわけだが、どこかのタイミングで一度は消えてしまう。とはいえ、それを侵入者がすぐに察知するのは難しいだろう。
「それに侵入者は魔法を一度は使用してるはず。突破するのは不可能だわ。今日のところは安心出来るでしょ」




