生き残る
「七です。焼却炉にあったのは彼の人形でした」
カイトは七の人形を零のいるところまで運んだ。右側の壁も調べるべきなのだろうが、キス達を待たせてるのも限界はある。
思ったよりも時間が経過していて、零が声を掛けたのもあるのだろう。
「赤の服……私も七だと思います。ですが、他の人形と違って、何かされてるように見えませんね」
零は七の人形を隅々と見る。『他の人形と違って』というが、彼女はそうなった人形を見た事があったか。キス達が言葉にした事で想像したのかもしれないが。
部屋の片付けやディアナの部屋に行った時、確認した可能性もあるのか。
「ですね。この人形が予知と関係しているのかも、今は分からない状態になりましたから。メアリ様達だったら、どう考えるでしょうか」
「……ここに人形が置かれていた事に意味があるのだとしたら、焼死という事なのかも」
「焼死!? 燃やされるって事ですか……けど、それだと」
「人形に不燃素材が組み込まれていて、原型が少しでも残っていたら」
人形が燃やされてしまえば、見つからないままになる可能性もある。零の言う通り、少しでも原型が残っていれば、焼死と思わせる事も可能だ。
だが、そんな簡単に人を焼死させる事が出来るのか。侵入者が魔法を使うにしても、火の魔法を選ぶのか。
三を殺害したのも魔法であれば、そちらの方が簡単なはず。火の魔法であれば、水を使えば助ける事も出来るかもしれない。
『彼女の言う通り、可能性はある。侵入者による攻撃、命約によるキスの身代わりもあるが……彼自身が焼却炉に来る可能性があったのかもしれない。現状、それが無理となった』
「ここに来たかもしれないって……メアリ様達の記憶の地図では」
擬似的世界は更新され、焼却炉の存在が分かったとしても、彼女達の地図では空白になっていたはず。
『それはメアリ達の記憶であり、従者達の記憶は含まれていない』
従者の記憶が地図に反映されてないのだから、彼等が外に出た可能性はある。
調理場から何かを捨てるのを七が見て、焼却炉へ確認に向かったのであれば、人形と同時に燃やされてもおかしくはない。
「七がこの場に来て、人形を発見すると同時に燃やされた……」
だが、カイトと零が焼却炉に来た事で、先に発見されてしまった。
侵入者の思惑、もしくは館の主の予知、両方が外れた事になる。
七達の死がキス達の記憶の本に残っていたのなら、色んな判断材料になるはずなのだが、死神曰く、その内容は書き記されていないのだ。
予知が外れた事によって、七は生き残る事になる……というわけではない。
キスとの命約がある限り、彼が先に死んでしまう。この変化によって、キスが生存する事になり得るのか。




