焼却炉
「それと……ついでなのですが、焼却炉でゴミを一度燃やしておこうかと。それを処分するのなら、丁度良いかもしれませんし」
焼却炉は調理場のゴミ捨て場と繋がっている。零がゴミを捨てる姿を七が確認しており、その目を借りていたキスもそうだ。
零が言う、それというのは、赤の侵入者の左腕だろう。館に持ち込んだところで、何処に置くかになる。そうなるよりも、いっそのこと消した方が早い。酷い話ではあるが、消すとすれば燃やすのが一番手っ取り早い。
燃やした物も復活させれるのであれば、それは回復魔法というより蘇生魔法となってしまう。
「それは良い案ね。燃やすのが一番確実だわ。七!! 館を一周回るから、私達が戻るまで警戒を解いては駄目よ」
キスは館の入口前にいる七に対して、大声を出す事で連絡する。そこまで離れた距離ではないからだ。そうでもしなければ、戻って来ない事を心配して、七がその場を離れてしまえば、侵入者が館に再侵入を許す事になる。
それを許さなければ、館内に侵入者が一人もいなくなるはずだ。
「キス様も一緒に来てくれるのですか?」
「当然でしょ。今のアンタ達を置いて、私が戻るとか、来た意味が無くなるわよ」
まともに動けるのはキスのみであり、侵入者がもう一度襲ってくる可能性がある。
『黒の侵入者は健在。奴が魔法使いであるのなら、キスがそう言うのも当然だ。君とメアリが殺される事があれば、謎解きも厳しくなるからな』
黒の侵入者相手にメアリ、カイト、零の三人では危険だ。魔法使いでなくとも、相手はボウガンを所持している。その威力は加護を貫通しているのだ。
『私としても気になるところがある。彼女も同じであれば、零を完全に信用したわけではないな』
信用という言葉が出てくるところ、彼女というのはキスの事だろう。零の疑いを一気に下げたところで、ゼロとは言っていない。
その後押しとなるのは、彼女が主の指示通り、見回りを続ける事だろう。次もそのように動くのであれば、共犯に等しくなる。
「貴女も彼女を疑っているのですか?」
カイトとしては自分の身を犠牲にしてまで助けてくれた彼女を疑いたくはないだろう。
『彼女はゴールド=ゴールの従者だからな。先程の行動も演技だったかもしれない。とはいえ、信用するなとも言っていない。キスのように疑うのを止めなければいい』
館の主の従者である以上は疑う事を続ける。その主が共犯であるなら、彼女を利用する。知らない内に協力する事になるかもしれないという事だ。
『焼却炉は調理場と繋がっているのだろ? キスは七の目を借りて、零がゴミを捨てているところを見ている。それを確認するのも理由に入っているかもしれないぞ』




